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第36話

そろそろ家を出ないと。俺に寄りかかって眠りだした八神を起こして「行くぞ」と腰を上げた。 「何て言えばええんかなぁ。俺は無駄な喧嘩はしたくないからやめよ〜言うたらええ?」 「いいんじゃねえか、それで」 「おっけー。わかった、何か緊張するな!」 「いや…」 「わからんちんやな!」って言われて、毎日通ってる場所だから緊張もクソもねえだろと思いながら要る物を持って家を出た。 車に乗って少しすると八神の携帯がうるさく鳴る。 「ごめん、電話出ていい?」 「ああ」 「ありがとう。───…おはよぉ、どないしたん?」 学校の奴らからの電話だろうか。柔らかい口調で話す八神だが電話の相手は何か怒鳴っている。 「もぉ、ハチは朝からうるさいなぁ、俺は今日は休みなの──────…いやや、そんなんしたらハチのこと嫌いなるで。ええん?……嫌やろ?ならやめて」 ふふっと笑った八神、けれどすぐにいつもより真剣な顔になった。 「そのことは心配せんでええよ、俺に任せとって。────ハチも安心して。一人ちゃうし、大丈夫やから。」 電話の相手の声はもう聞こえない、八神の言葉で安心して落ち着いているのか。 「じゃあね、今日はそっち任せたから」 そうして通話を切った八神はふっと息を吐いて俺にまた「ごめんね」と謝った。 「同じ学校の奴からだろ?お前本当に行かなくて大丈夫なのか?」 「大丈夫大丈夫。そーんなヤワな奴はうちのとこおらへんから。俺がおらんでもしっかりしとるよ」 「そうか。」 信頼してるんだな、お互いに。 こいつが高校のリーダーをやってるというのはこういう時によくわかる。 相手を落ち着かせる声のトーンや言葉を知っているところとか、仲間を信じてるところとか。 年下のくせに、俺にない物を持っている。羨ましい。 「もう着くぞ」 「うん、気合い入れるわ!」 「…何のだよ」 たまに、意味が理解できないところがあるけれど。

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