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第56話
少し経って八神はモゾモゾと動き出した。
「大和…」
「ん…?」
「…俺な、話してないことあるねん」
「…話したくないなら話さなくていい。」
「ううん、ちゃんと話す。…けど、俺そのことは上手いこと話すことできやんくて、まだ自分でも理解できてないところもあるし、話すのめっちゃ長くなるかも知らんねん、けど…聞いてくれる…?」
不安そうに俺を見る八神の額にキスを落とし、焦ってるように見えたから少し落ち着かせようと柔く抱きしめる。
「ちゃんと聞く。お前のペースでいいから、落ち着いて話せ」
「…う、ん」
深く息を吐いた八神は何かを覚悟したような表情を見せ俺の名前を一度呼んでから儚げに微笑んだ。
「俺…ってか、俺の親な、すごい金持ちやねん。」
「ああ」
「それで、すごいプライド高くて、自分中心で生きてはって。…自分がよければ何でもええねん。自分たちのことを何や変に言われたら嫌やったんかしらんけど、俺に友達を作らさせへんかった。作ったとしても、全部、無理矢理関係切られてな。家出て一人暮らし始めるまで俺はずっと一人ぼっちやった。」
段々と暗くなっていく八神の表情、心なしか呼吸も早くなっていってる気がする。
「それで……えっと、…それ、で…」
「ゆっくりでいい」
「…ん。…なあ、手貸して…?」
そう言われて片手を差し出すとぎゅっと強く手を握られた。「話してる間、こうさせて」ってまた不安そうな顔をするから、一度頷くと薄く笑った。
「それでな…」
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