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第62話
「何~?お客さん来とるん?俺出てええの?」
「いいから…そのだらしねえ顔やめろ」
「俺の寝起きの顔もかわええやろ」
「さっさと顔洗いに行け」
自分の両手で頬を押さえ、軽く笑い小首を傾げる八神。ああ、確かに可愛いけどそんな顔はあいつらには見せるな。と少しの独占欲に似たそれが溢れた。
八神は顔を洗いに行って、俺は見事とユキくんのところに戻る。
「命もユキくんも悪いな、命はコーヒーでいいだろ。ユキくんは…お茶でもいいかな、ジュースとかねえんだ」
「…僕…お茶…早河さん、ありがとう、ございます」
ソファーからわざわざ降りて俺に頭を下げるユキくん。ああ、そんなことしなくてもいいのに。いいんだよと頭を撫でるとフフッと笑うユキくんに八神からのとはは違う癒しがもらえる。
「おはよーございまぁす」
そんなとき敬礼のポーズでリビングに来た八神。
「初めまして、八神琴音です」
「琴音、くん……こと、琴くん…」
「そーやで、琴くんやで、君は?」
「…僕、ユキ…」
「ユキくんかぁ、よろしくね~。お兄さんは?」
八神とユキくんが握手をする、それから八神は命へと目を向けた。
「黒沼命」
「命さんか!よろしくお願いしますー!」
いつも以上にテンションが高い。それは無理矢理作ってるものだと俺は知ってるが…人前でいる以上昨日までの姿を見せられないんだと。それは多分八神のプライドなんだと思う。
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