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第74話

玄関を開けると部屋はシーンとしていた。リビングに八神の姿はない。時間は正午を少し回ってる。 寝室に入ると布団が一部膨らんでて、それを遠慮がちに捲るとカタカタと震えてる八神がいて。 「琴音」 「っ、あ、」 「大丈夫だ」 「大和っ」 小さくなってる八神を抱きしめてやると安心したように小さく笑う、なのに 「大和の、隣に、おりたいっ」 「ああ」 「離れたくなんかないっ」 そう言って泣き出して俺から離れまいと強く抱きついてくる。それは苦しいと感じるくらいに。 「琴音ら今からどうするか考える。もしかしたらお前にとっては辛いことをさせるかもしれない。それでも、俺から離れないために、頑張れるか?」 「うん」 「わかった。…とりあえずお前の両親のことを調べさせてもらうな」 「…ごめん、なさい」 「ん?」 何に対して謝ってるのかわからなくて「何も謝ることはねえぞ」って髪を撫でるとくしゃりと笑う。 「俺、迷惑かけてばっかりや、って」 「そんなことねえから。迷惑だったらわざわざこんなことしねえよ」 ふっ、と笑い八神にキスをする。何でもいい、少しでもこいつの不安が消せることをしてやりたい。そう思って行動を始める前に一度八神を抱いた。 深く眠った八神をベッドに残しパソコンを開きながら鳥居に協力してくれるように頼んだ。「いいですよ〜」と返事をくれた鳥居に感謝して、急いで八神の両親のことを調べてもらう。 八神に友達を作らせないようにしていたくらいだ。何か、外に出てはいけない秘密があるに違いない。そしてそれはきっと世間的にまずいことなんだろう。 鳥居に調べてもらうのと同時に自分もそれについて調べだす。何か一つでも見つかりますようにと祈りながら。

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