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第77話

「そうかそうか、お前らは付き合ってるんだな」 「あ、の、親父!」 「言わねえよ、別に。」 「大和、大和!親父さんにバレたんやからいいやろ?お願い、一回だけキスして」 「それとこれとは、」 「してやれよ」 親父にもそう言われて仕方なく…なんて嘘で、本当は俺だってこいつと離れるのは嫌だし、寂しいと思う。だからキスができる事が嬉しく思えた。 唇を合わせて涙を目に貯める八神。少しして離れると安心したように小さく微笑んだ。 「俺、頑張る」 「ああ」 「大和も、頑張って…」 「すぐ帰ってくる」 後ろ髪を引かれる思いで親父の部屋を出て、廊下を歩き乗ってきた車に乗り込む。 さて、とりあえずいざという時は親父があれを公表してくれるし、俺は俺の思うように動けばいい。 一人で家に帰ってソファーに沈む。風呂に入ろうか、としたところで早速八神から電話がきた。 「はい」 「大和…?」 「どうした」 「やっぱな、寂しい…。あのな、ハルもおるし、いけるかなぁ思ってんけど、大和やないとあかん」 「…ちょっとの辛抱だ」 「大和も寂しい…?」 「ああ、すげえ寂しいよ」 そう言うと電話の向こうでクスクスと八神が笑う。それから甘えてような声でまた俺の名前を呼んだ。 「好き、大好き。帰ったら大和にめっちゃ甘えてもいい…?」 「ああ」 「ふふっ、───あ、ハルに呼ばれたから行ってくるね」 「おう、おやすみ」 「うん、おやすみ」 通話を切る、途端襲い掛かってきた寂しさにため息を吐いた。 いつの間にかこんなにも八神に溺れてしまっている、本当は寂しいという八神を今すぐにでも抱きしめてやりたい。 「早く、片付けねえと…」 じゃないと、あいつが泣いてしまうから。

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