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第81話

ヒュンヒュン、風を切る音がなる。刺されないように切られないように躱すが、そろそろ無理かもしれない。 女がボディーガードに俺を捕まえるように指示をした。やべぇな、と思いながらここで逃げるのも違うと思って、捕まる前に倒してしまおうと動くのにガタイのいい奴らはなかなかしぶとくて捕まってしまった。 羽交い締めにされて女の方に向けられる。ニヤリと笑った女は俺に近づいて俺の顎に指を這わせた。 「今なら、まだ選ばしてあげてもいいわよ」 「だから、そんなもん御免だっつっただろ」 「あら、そう。残念ね。」 「─────っ!!」 途端、腹に激痛。 むせ上がってくる鉄の味。 口の中に赤が広がって端からゆっくりと垂れていく。 声も出なかった。口の中にある血を吐き出してはぁ、はぁと何度も息を吐く。 久しぶりに味わう本気の痛み。女は不敵に笑って「死になさいね」と一言いい男どもを連れて家を出ていく。俺を刺したことをどうにかして消させるつもりだ、警察側に仲間がいるのかもしれない。 って冷静に考えている今も血は溢れて止まらない、トラに何とかしてもらおうと携帯がある場所までゆっくり歩いて電話をかけた。 「はーい」 「トラ、悪い」 「なぁに?どうしたのー?」 「刺された」 「······今どこにいるの」 「八神の、家」 「住所、わかる?わかるなら教えて。わからないならGPSで命に見つけてもらうわ」 住所、なんだったっけ。 一度聞いたはずなのに思い出せない。 「ちょっと、早河!」 「…わか、ね…」 血が出過ぎてるのか頭が回らない。止血できるものってタオルを傷口に当てて抑える。鋭い痛みが身体中を走って我慢できずに嘔吐した。 「はぁ…や、べ…」 「早河!!」 携帯が手元から落ちてガチャンと音を立てる。 視界がグラッと揺れてなんとか座っていたのに横になってしまった。 まあ、とりあえず親父があの情報をなんとか警察に渡してくれるだろう。そしたら八神の親は無事ではいられない。きっと何も知らない八神は自由になれる。 よかった、とゆっくり目を閉じた。

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