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第82話 琴音side
「八神くん!!」
ハルと浅羽組で話してると誰かが大声で俺を呼んでる。明らかに焦ってる様子で、ハルの部屋から廊下を覗くと肩で呼吸してる赤い髪の男の人がいた。
「えっと?」
「あ、君が八神くん!?今すぐトラのところ行くよ!」
「え、何で?」
「早河さんが刺されたんだよ!!」
それを聞いた瞬間音が聞こえなくなった。
いや、聞こえてるけど、自分の脳にはちゃんと入ってこうへんみたいな。
赤髪の男の人にゆさゆさと肩を持って揺らされる。ハルは「何があったんだ」ってその人に聞いてたけど説明できやんみたいで、ハルに「親父に報告しておいてください」と言い俺の腕を引っ張って廊下を走るように歩かされる。
少し歩いて車に乗せられる。発車した車、何も考えられへんまま男の人の話を聞いてた。
「早河さんが死ぬことはないよ」
「でも、すごい焦ってるやないですか…」
「うーん、俺は早河さんと長い間一緒にいるから、重症負ってるのに焦らないってわけがないんだよ。命さんが早河さんの居場所をGPSで見つけて、トラに報告したらトラが迎えに行ってくれて、今手当てしてる。そのことを俺に伝えてくれって」
「そ、っか…」
「大丈夫だよ。今、君たちが何をしてるのかは知らないけどきっと、大丈夫だ」
大和が刺された。それを今やっと理解できてきた。心臓がばくばくうるさい、たまらんくらい胸が痛い。
「意識は、あるんですか」
「ううん、今はないらしい」
「そ、ですか」
誰が刺したんや。なんて聞かんでもわかる。
俺の親、母さんか父さんかはわからんけど。
「……俺の、せいや…」
嫌になるくらいの痛み、きっと大和の痛みはこんなもんじゃなかった。
「ごめん…ごめ、ん、なさい…」
「八神くん…?」
「俺の、せいで、ごめんなさい…っ」
溢れ出る涙、拭っても拭っても止まらなかった。
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