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第86話

まだ動いちゃダメだってトラに二日間はここにいるように言われた。その間に親父が繋がっている警察のサノを連れてやってきた。 「お前、一人で無茶ばっかりするところ変わんねえのか」 そんな小言を言ってくるサノ。 組織の中でも割と上の方にいて、親父の昔からの知り合いとかなんとか。 「データの調べがついたら八神の奴らは俺たちが捕まえる」 「でも、八神琴音は、何も知らなかったみたいだから、あいつには何もしないでくれ。あいつはむしろ被害者だから」 「……一応取り調べはしなくちゃいけない。本当に何も知らないようなら、それ以上は何もしねえ。それに八神琴音の取り調べは俺自らやる、悪い風にはしねえよ」 「ありがとう」 サノは悪を許せないと言う。 でも俺たちは悪じゃないんだとか。 まあここら辺一帯を任されてるのは浅羽組だ。悪いことをしてる奴らを取り締まってるのもうちだ。 ヤクザと繋がってることがやばいが、俺たちの事は割と警察側も目を瞑ってくれている、それはサノのおかげでもある。 警察とヤクザの前に俺たちは友達だからなぁとこの間笑って言っていた。 「親父も、ありがとうございます」 「ああ。で、どうする、八神…琴音はお前のそばに置いとくか?お前が帰れるまで俺の方で見ておこうか?」 部屋の隅で俺たちの話を聞いていた八神はびくり震えて俺を見る。うーん、と考えて親父に「俺が…」と言うと八神の顔は嬉しそうな表情に変わった。 親父たちが帰ってから八神は俺の隣に来てふふっと笑う。俺の手を握ってその手の甲にキスを落とした。 「好き。大好き」 「ああ」 「早く、良くなって…。なんともなくなったらいっぱいイチャイチャしたい」 「そうだな」 そう言って笑うと八神も笑って俺に優しく抱きついてきた。 その体温が暖かくて俺も八神の腰に腕を回した。

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