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第87話
いつの間にか眠っていた、隣には八神もいた。
「早河、起きたならちょっと話があるんだけど」
「あ…?」
ゆっくり起き上がりベッドヘッドにもたれかかり座る。トラは俺の着ていた服を捲り、傷があるところに手が置いた、それが痛くて眉を寄せる。
「い、てぇっ」
「当たり前でしょ。…あのね、これ、相当強い力で刺されたでしょう。傷が深くて私のところじゃ診れなかったかもしれなかった。」
「……ありがとな」
「それはいいんだけど、どうしたらこうなるの、あんた今度は何をしてるの」
真剣な目で見られて逃げられない。小さく笑って今の状況を話すと深い溜息を吐かれた。
「あんたね、一人でそこまで頑張らなくていいでしょう。」
「一人でしないといけなかった」
「そう思ってるのはあんただけよ。…馬鹿ね、本当」
髪をわしゃわしゃと撫でられて軽く笑うと隣で八神がモゾっと動く。ゆっくり目を開けて俺を見てふんわりと笑った。
「おはよぉ…」
「おはよう」
「座っとって、大丈夫?」
「ああ」
「ふふっ、トラさんトラさん、大和もう大丈夫…?」
八神もゆっくり起き上がって座りトラにそう聞いている。俺はもう大丈夫なんだが。と思いながらトラを見ると「そうねぇ」と言ってまた俺の傷に軽く触れる。
「い、てぇって、」
「らしいから、あんまり無理はさせたくないのよ」
「…そっかぁ」
「お前が触らなかったら痛くねえよ」
「でも、ほら」
「っ!!だから、やめろって!」
今度はさっきより強く押されてやめろ、って手を払った。あまりの痛みに一瞬声が出なくなる。
「大丈夫…やないね…?」
「そう思うなら、トラに向こうに行ってもらってくれ」
「……トラさん、ごめんやねんけど…」
「わかってるわよ!ゆっくり寝ときなさいね」
トラが向こうに行って八神が俺を心配そうに見てきた。
「…悪い」
「ううん、ええねんけど…」
「ん?」
「こわ、かってん、めっちゃ…」
「…悪かった」
「違う、違うねん…謝るんは、俺の方やねん…」
泣きそうになってる八神を引き寄せて、キスをする。大丈夫だってわからせないと、きっとこいつは自分のせいだってずっと自分を責め続ける。
「お前は何にも悪くねえ」
「や、って…それしたん、俺の…」
「お前の母親だ、でもお前はそのことに関係ないだろ。」
「…う、ん」
「な?だからお前が悪いとか、そんなこと思わなくていいから。」
抱きしめて頭を撫でてやると胸に顔を押し付けてくる八神。スンスンと匂いを嗅いでいて可愛いなと思う。
「好き…好き…」
「俺もだ」
「早く、二人きりになりたい」
「そうだな」
二人になって、普段はあまり強く思うことは少ないが…こいつと繋がりたいなと思った。
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