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第92話

その日からまた数日経った。 テレビは一つのニュースのことで騒がしい。 「や、大和…」 「大丈夫だ」 八神の両親のことをアナウンサー達が話してる。 八神は怯えて俺にしがみついて離れない。 「お前は捕まったりしねえし、例えそうなってもすぐに助けてやる」 「…う、ん」 怖いならしばらく外に出なくていいぞ。と言うと深く頷いて俺の肩に顔を埋めた。 「ちょっとだけ寝るか?」 「ううん、このまま、おらせて」 「いいけど…辛くねえか、体勢」 「ん、大丈夫」 身近な人間が逮捕されたとなるとそりゃあ怖いよな。八神は小さく震えていて、バレてないと思ってるんだろうか、薄く笑う。 「明日から、俺は仕事に行くけど…おまえ一人で家にいれるか?」 「…わから、へん」 「一緒に来るか?親父が来てもいいって言ってくれてる」 「…邪魔にならへん…?」 「なんねえよ。若のところにいたいなら若のところにいればいいし、命とか、鳥居とかといたいならそっちに行ってもいい」 「大和は…?」 「俺は基本幹部室にいる。そこには赤石と中尾っていううるせえ奴がいるし、命もいるな、鳥居はたまにいるけど…。中尾はゲーム好きだからそいつとゲームでもしとくか?」 八田には…ちょっとうるさくなるかもしんねえって謝っとかねえといけねえが。 「俺、大和のそばおる」 「じゃあ、明日ついてくるんだな?」 「行く、ちゃんと静かにする」 「別に、静かにはしなくていいぞ」 大分うるさい奴が幹部にも二人いるから。 そんなこんなで… 「あ?早河そいつ誰だよ」 「八神琴音」 八神のことを俺の恋人だと中尾に紹介するのはなんだか嫌ではぐらかした。 「ふぅーん。…お前なんかしたのか?」 「え、っと…や、大和…」 朝、八神を連れて組に来たら珍しく中尾が早く来ていて俺と八神を見て眉を顰めた。 「はぁ?お前早河のこと名前で呼んでんのか!?」 「あ、っ、は、早河、さん」 まずかったのか。と八神は慌てて俺を名前ではなく苗字で呼んできた。はぁ、と溜息を小さく吐いて八神の髪をワシャワシャと撫でる。 「名前でいい。…お前本当にここでいいのか?こいつずっといるぞ、疲れるだろ」 こいつ、って中尾を指すと中尾が「何だと!」と俺をギロッと睨んできやがった。 「でも、俺…大和と離れるん、嫌や」 「…わかった。こっち来い」 「うん」 八神の手を掴みソファーのところに連れて行き座らせる。俺も隣に座ってそこで仕事をすることにした。 「暇になったら言えよ」 「うん」 暇になったら、って言ったけど暇だよな普通に。 何かを遠慮してるのな気を使ってるのか動かない八神、大丈夫か?と資料から顔を上げ八神を見ると何故かカチコチになってて、ギギギ、と壊れたブリキみたいに首を動かし俺を見て引きつった笑顔を見せてきた。 「……こっち来い」 「う、ん」 とりあえずここから連れ出してやろう。と幹部室を出るとはぁ、と息を吐いた八神。この間若の部屋にいた時はこんな感じじゃなかったから…若のところにいればマシになるかな…? 「若のところにいるか?」 「い、行っても、いい…?」 「ああ、ついて来い」 そう言って廊下を歩く。遠慮がちに俺の手に触れてきた八神の手、八神を見ると困ったように眉を下げていて、「あかん?」と若干上目遣いで聞いてくる。可愛いな、と思いその手を握ると嬉しそうに笑った。

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