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第101話
「ハチ、腕痛いんやけど…」
「何があったのか教えてくれたら離すよ」
「…教えられへん」
「何で?」
「……………」
「教えてくれないならさぁ」
俺の腕を掴むハチの力が強くなる。
「そんな中途半端に平気なフリしてんじゃねえよ」
その言葉に心臓がうるさくなる。
「顔色も悪ければ、人の言葉が聞こえないくらいに何かを考え込んでてさ、そんなの何かあったに決まってんだろ」
「…ハチ」
「何だよ」
「俺、あの、俺さ…」
「うん」
「俺の、付き合ってる人、大和って言ってヤクザやねんけど…」
「…うん、それは薄々知ってたよ。最近家に帰ってないみたいだし、あの浅羽晴臣と仲がいいし…何か繋がりがあるんじゃないかって疑ってた。
ハチは鋭いなぁって、苦笑を零す。
「…なるほど」
「多分、その大和さんが浅羽組なんだね」
「…うん、そこの幹部」
理解したのか数度頷いて「それで?」と続きを促すハチに話していいものかどうかすごく悩んだけど、ゆっくりと口を開いた。
「近いうちに抗争始まるんやって」
「…抗争、ってことは、危ないんだね?大和さんが。同盟結んでる浅羽も」
「うん」
ハチは数学とかの勉強はできやんくせに、こういうことでは頭がいいから助かる。
「大和さんが死なないか、不安なんだね?」
「…うん」
「そっか…それは怖いね」
いつの間にか掴まれていた腕は離されていた。
「今朝、アイと来たのもそのせい?」
「…大和が、1人で行動するなって」
「少なからず浅羽組と関係持ってるんだもんね、琴くんは」
ハチが眉間に皺を寄せて、一度小さく舌打ちを零した。
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