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第105話

「何でもいいけど、そいつは俺の大切なやつじゃねえよ」 「ああそうか、それでもなんでもいい。こいつ顔が整ってるしな、親父や若が気に入れば、こいつを連れて来た俺を褒めてくれるはずだ」 「ああ、お前のとこのは顔が整っていたらなんでもよかったっけか」 淡々と話をする大和に誰も殺意を向けてない。 多分、ここで大和は死ぬことはない、と思ってどうやってこの男から抜け出そうか考えていた時だった。 「おい、"八神"」 「え…」 大和に、名前じゃなくて、苗字で呼ばれた。 それだけで心臓は嫌なくらい音がなる。 「終わりだ」 そう言った大和の顔が、声が、脳裏に焼きつく。 周りの男たちは大きな声でゲラゲラと下品に笑った。

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