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第121話

「起きろ」 「ん…」 体を揺すられて目を開けると切羽詰まったような表情した宗ちゃんがいた。 「来た」 「え?」 「浅羽が、来たんだ」 急いで俺を起こした宗ちゃんは、数人の組員を連れて裏口から逃げようとする。 「ま、っ、いた、痛い!」 「早くしろ!」 靴も履かんと裸足のまま隠されていた裏口の方に走る。足の裏はきっといろんな石ころや砂のおかげで怪我ができてるんやろう。 「止まれ!!」 そんな聞き覚えのある声が聞こえてきて振り返る。 宗ちゃんも足を止めて顔に笑顔を貼り付け振り返った。 「ああ、早河じゃねえか」 心臓がうるさく音を立てる。 宗ちゃんの後ろに隠れるように言われて、それでも大和の顔が見たくて、言うことを聞かずにその場でジッと大和の方を見た。 「もう裏も固めてる。逃げる術はねえ、大人しく捕まってろ」 「……悪いがそれは無理だ」 そう言って俺の腕を強く握り逃げようとした宗ちゃん。 「え」と思って振り返った時、こっちに向かって銃を構えてる大和が目に入って、慌てて宗ちゃんと大和の間に体を入れた。それに気づいた宗ちゃんは俺を引き寄せる。 パンッと乾いた音がなる。 それとほぼ同時に激痛が走って地面に崩れた。 「ッ────!!」 「こ、とねっ」 宗ちゃんが優しい目で俺を見たけど、その口からは赤い血が伝っていて似合わない。大和の方を見ると宗ちゃんとは真反対のすごく冷たい冷めた表情で立っている。 それを最後に意識を失った。

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