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第122話 早河side
俺の前でひどく狼狽してる田中の組員達。
若頭と八神から流れる血を止めようと、着ていた服を脱いでそれを傷口に当てている。
「早河」
「ああ」
違う場所を抑えた命が俺のところにやってきて、俺の背中の、その先にある光景に驚いて目を見開いた。
「…お、い…お前が撃ったのか!?」
「ああ」
命が俺の胸倉を掴んで睨みつけてくる。
それに意味がないと思ったようで、俺を捨てるように手を離して八神のところへ走って行った。
そんな時、浅羽の組員がやってきて田中の組員を抑え込む。
「こと、ね…琴音、やめろ…死ぬな」
それが極道の若頭の言う台詞か。
意識が朦朧としてるんだろう、八神の方に手を伸ばしてるけれど、力が出ないのかその手はすぐに地面に落ちて、若頭の目から溢れている涙を見て他人事のように「可哀想だ」と思う。
若頭と八神はすぐに命とその下につく組員達によってトラのところに運ばれた。俺はただ、その光景を見ているだけだった。
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