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第124話 琴音side
光が1つもないところでずっと迷ってる。
一人でポツンと突っ立ってるけど、正直寂しくて仕方がない。
「琴音」
名前を呼ばれて振り返るとそこには宗ちゃんがいた。
駆け寄ると嬉しそうに笑って俺の髪をわしゃわしゃと撫でてくれる。
それを目を閉じて受け入れて、話したいことを思い出して目を開けるといなくなっていて「え」と声を漏らす。
「宗ちゃん…?」
いなくなったのが信じられなくて一度強く目を閉じて、それからまた開けた。
***
「ん…」
「───起きたか」
俺の顔を覗いてる宗ちゃん。
そしてその奥に見えるトラさんの姿。
「宗ちゃん…」
「ああ。───おい、琴音が起きたぞ」
そう言って宗ちゃんはトラさんを呼んだけど、正直申し訳ないけど、トラさんは今はどうでもいい。
「気分はどう?」
「…そ、ちゃ…」
トラさんの言葉を無視した俺。宗ちゃんに手を伸ばすとその手をすぐに掴んでくれたけど、「ほら聞いてるだろ」とトラさんに視線を投げる。
「あ、だ、大丈夫…」
「そう。…あのね、琴音くん、すごく言いにくいんだけど…この人はもう浅羽に連れて行かれちゃうの。」
「は?」
突然のことで頭が混乱する。
宗ちゃんが、連れてかれる?
今まで味わったことのないほどの絶望感と恐怖に襲われて、身体が悲鳴をあげるのも構わずに起き上がり宗ちゃんに抱きついた。
「いや、嫌や、なんで…」
「琴音くん!傷口が開くわ!ちゃんと寝てないと…」
「嫌や!!」
俺の名前を怒鳴るように呼ぶトラさん。その声が気になったのか近くに人が「どうした」と言いながら部屋にやってきて、その人をギロリと睨みつけた。
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