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第125話

「八神」 「…あ、み、命、さん…」 「八神、そいつから離れろ」 「嫌…なあ、なあお願い。命さんやったらなんとかできるやろ…?宗ちゃん連れてかんといて…俺、俺には、もう帰る場所が、ないねんっ」 宗ちゃんに縋り付いてそう言うと、命さんは顔を歪めた。命さんであかんのやったらハルに頼めばいい。そう思って「俺の、俺の携帯!」と叫ぶとトラさんに「落ち着きなさい」と肩を軽く叩かれる。 「ハルに頼むねん…そしたら、大丈夫やから…」 「若は今回のことに関しては全部親父の判断に任せてる。あの方に頼んでもどうにもならねえよ」 そう聞いた途端、一気に怒りと、言葉に表されへんくらいの悲しみが溢れてきて、腕に繋がれていた点滴を雑に抜いて地面に立ち命さんに詰め寄った。 「俺のこと巻き込んだのは浅羽におる幹部の早河や。そんでそいつは俺を捨ててん。…やのに、俺に悪いって思わんの?あんたら浅羽は、自分のした行いを正しいことやと思ってんの?」 「…琴音くん、傷口が開くから、ここで大人しく…」 「なら初めから俺に酷くしとけばよかったんや!!俺のことすぐに捨ててくれたらよかってん!!そしたらこんな…こんな目にあってへん!!」 体が痛い、立ってるのも辛い。 それでも言いたいことは沢山あって、溢れてくる涙が頬を濡らす。 「宗ちゃん、宗ちゃん。お願い、一緒に逃げよ…?」 宗ちゃんのそばに寄って縋るように腕を掴み訴えた。 「…逃げねえよ」 「な、んでなん…早く、ここから逃げて、遠いとこ行って…そしたら…」 「俺はしてはいけないことをした。お前がそうやって俺を許してくれてるのは嬉しいことだけど、他の奴らはそれを許さない。…だから逃げられない。お前に会えてよかったよ」 「…い、行かんで…っ」 「じゃあな」 優しく今まで見たことないくらい柔い笑顔を俺に見せながら、大人しく命さんに連れられて部屋を出て行った宗ちゃん。 「琴音くん!!」 「…ぁ、ぁ」 息の仕方を忘れたみたい。うまく呼吸ができなくて床に倒れ込み、そのまま意識は途切れた。

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