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第126話
数日後に目を覚ました時には自分の人格だけがまるで無くなったみたいに、話すことも億劫で口を閉ざしていた。
「琴音くん、ご飯食べないと」
そう話しかけてくるトラさんを見るのも嫌で、目を閉じて拒絶する。
最近は全く眠れない。眠ったとしても夜中に何度も目を覚ましてまるで寝た気がしやんし、ただ疲労感が募るだけ。
今のままじゃ怪我が治っても外に出せないと言うトラさんのせいで、怪我はもうだいぶ良くなってきてるのにベッドの上から降りることすら厳しい状況。
「…琴音くん、辛いのはわかるわ。あなたがどれだけ苦しんだかも。…でもね、あの人は犯罪者なの」
「………………」
「それでも、あなたにだけ優しかったのは、あなたを利用しようとしたんじゃないの?」
何て事言うんや。
近くに置いてあった適当なものを手で掴みトラさんに向かって投げつける。見事にクリーンヒットしたそれは地面に落ちて、思わず口元がニィッと歪んだ。
俺を見るトラさんの目が鋭くなる。
「…なあ、トラさん」
「なぁに…?」
「もう大丈夫やから、出て行く」
「…大丈夫じゃないわ、ダメよ」
そう言って俺の寝転がるベッドの近くに椅子を持ってきたトラさんはずっとそこにいて、絶対、トラさんが眠った時に逃げ出してやる。と、思いながら、逃げ出した後、どうしようか、という事を考えて、虚しくなった。
俺には行く場所も、帰る場所もないんやから。
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