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第127話 早河side
琴音がいなくなったと連絡があった。
トラの話によると怪我はだいぶ良くなってきているが精神面では危ないと言っていて悪寒が走った。
その知らせは幹部全員に来ていたようで、幹部室に着くなり急いで外に琴音を探しに出た。
一応家に帰ってみたけど、そこにはいないし、学校にも行ってみたけど姿はない。あいつの事なんて俺は結局のところあまり知らないから、お気に入りの場所も、何もわからない。手がかりがない状態でただひたすらに探すのは難しい。
一度トラの元に集まる事になってそこに行くとトラが椅子に座り項垂れていた。
「夜中に、眠っちゃったのよ。そしたらその間にいなくなった。…あの子、もう何日も食べてないし精神的にもボロボロだったの。全然話してなかったのに"大丈夫だから出て行く"ってだけ、最後に言ってたわ」
「…な、んで、そう言った時にすぐに連絡しなかったんだ…」
思わずそんな言葉が出るけど、トラを咎める権利は俺にない。同じ事を思ったらしい命は俺を鋭く睨んで「誰もテメェに言われたかねえよ」と言ってきた。
「あの子、この前あんたたちが連れて行った奴にすごく心酔してた。あの人に会いたくて仕方ないんだと思うの」
「…あいつは今はうちの地下にいる」
「あの場所に戻ったら、会えると思ってたり、しないかしら」
あの場所とは田中組の屋敷の事だろうか。
琴音ならあり得ると思って急いで建物を出てそこに向かう。
何もまずい事にならないようにと願いながら車を走らせた。
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