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第130話
頰に酷い痛みが走る。
目を開けるといるはずのない人がいて瞬きを2、3回繰り返した。
「…な、んでおるん…?」
「そんなのどうでもいい!テメェ何やってんだ!」
「は、ぁ…え?」
なぜか息を乱した宗ちゃんが目の前にいる。
今の状況が飲み込めなくて、宗ちゃんをじーっと見た。この人、偽物やないやろな。
「本物…?」
「あぁ!?」
「あ、本物やわ…」
宗ちゃんが怒ってるのはわかってるけど、それ以上にここに来てくれたことが嬉しくて、宗ちゃん首に腕を回して抱きつく。
「帰ってきたぁ!」
「一時的にな」
「それでもええ、ここに来てくれたの、嬉しい…」
強い力で宗ちゃんが俺を離して距離をとる。それから大和のところに行って、多分俺もそうされたんやろう、頰を思い切り殴りつけた。
「俺は今からもうしばらく外には出れねえし…だからお前に琴音を守る許可をやる」
「………………」
「こいつに1ミリでも怪我をさせるな。それができないと思うなら今すぐここから消えろ」
俺抜きで…というか宗ちゃんだけで話が進んでいく。俺も大和もよくわからんくて放心したままや。
「聞いてんのか!おい!」
「…聞いてる」
「よし、じゃあ今から言うことをちゃんと一回で理解しろ。これから琴音を連れて帰って、これ以上ないくらい死ぬまで一生愛してやれ」
「あんたは、何、言ってるんだ…?」
「あぁ?理解しろっつっただろうが…」
本当にイラついてるようで舌打ちを零して「だから…」と低い声で言う。
「琴音を傷つけるな。これから先、ずっと」
「…あんたはそれでいいのか」
「俺からこう言ってるのに良いも悪いもあるか?お前そんなんで浅羽の幹部なんてよくやれたな」
さっきからすごい貶されてる…。可哀想にも思えるけど、でも待って、俺やって理解できひん。もしかしてもう2度と宗ちゃんに会えなくなるんじゃないのかと考えてしまう。
「宗ちゃん…?」
「ああ、それから琴音、お前は今日からこいつの家に帰って死ぬまで永遠に愛されてろ」
「あ、会えんく、なんの…?」
「ンなわけねえだろ、バカが」
口元を三日月に歪めて笑う宗ちゃんは「これやる」とさっき俺が勝手に使ったジッポを投げてよこす。
「それやっといてなんだけど、あんまり吸うなよ」
「…ほんま、適当やなぁ」
俺がそう言って笑みを漏らすと宗ちゃんは安心したように柔らかく笑った。
その笑顔が宗ちゃんの本物の顔やと知ってるから、嬉しくなる。
「おい早河、早くあの医者のところに連れてってやれ」
「……………」
そばにやって来た大和に傷んだ手を取られる。
眉を顰める俺と同じように大和も眉を顰めた。
「痛いだろ」
「当たり前やん」
「早く手当てしないと傷が残る」
「別に、男やから傷くらいええけど」
以前より態度が冷たくなってしまうのはもう仕方がない。大和もそれはわかっているのか、それでも俺が話をちゃんとすることを喜んでるのか知らんけど、優しい顔になっていた。
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