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第134話
しばらく休んで"痛くても我慢すればええ"という考えに至った俺は、寝室を出てリビングで片付けをしている大和に声をかけた。
「寝てろって」
「もう大丈夫やから。」
俺に寄ってくる大和を片手で制して片付けられていたソファーに座る。
「あ、ごめん、灰皿とって」
「…吸いすぎ」
「やって落ち着くんやもん」
大和の煙草を勝手にもらって、宗ちゃんのジッポーで火をつける。それをなんとも言い表しにくい表情をしながら見る大和に思わずフッと笑う。こうなったのはあんたが原因やのに、なんて意地悪なことを思いながら。
「飯、食えるか?」
「食べれるよ」
「何が食べたい」
「え〜となぁ、鍋食べたい!キムチ鍋!」
そう言うと「そんなの食えんのか?」と近くに来て不思議そうな顔をされる。
「食べれるよ。野菜いっぱいで、餃子も入れて…」
「わかった買ってくる」
「俺も行く」
「いい、お前はゆっくりして…」
やたらと俺に気を使い出す大和は俺のと距離の取り方を前みたいに上手く掴めないらしく、少しだけ困惑してるのかわかった。
「なんか変やな」
「変?」
「前はもっと俺に対して適当やったと思う。…あ、悪い意味ちゃうくてさ」
「…それは」
「うん、今回の一件があったからやってのはわかってるねん。でもやっぱりちょっと…寂しいかなって」
ヘラッと笑ってみせると俺を泣きそうな顔で見て、優しい力で抱きしめられる。
「ごめん…」
「謝らんでいいから、一緒に買い物いこ?」
「ああ」
少しでも一緒におれんかった時間を取り戻したい。
こんな不気味な感じすらする曖昧な距離を早く縮めたいと心から思った。
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