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第142話
「ただいま」
「あ、おかえり」
髪をワシャワシャと拭いてたから玄関の開いた音に気付かんかった。
すぐそばで大和の声が聞こえで驚きながらも返事をすると「ちゃんと乾かせよ」と後ろからタオルを取られて優しく丁寧に髪を拭いてくれる。
「何買ってきたん?」
「今日と明日の分の食材」
最後に髪をワシャワシャとされて思わず「ふふっ」と声が漏れた。
「何だ?」
「何もないよ、髪乾いた?」
「まあ、ある程度」
ぐいっと顔を上げると大和と目が合う。
「ずっと、言ってなかったけど」
「あ?」
「ここに、おらせてくれてありがとう」
「…なんだよ、急に」
「全部、大和のおかげやねんもんな」
「……………」
「ごめんなさい、冷たい態度とって」
大和の方に体を向けてそう言えば困ったように笑った大和が「そんなの、いい」と言って俺の頬に触る。
「俺に謝るなんてことしなくていい。俺はお前に対して許されないことをしたんだ」
「俺はとっくに許してるけど?」
「でもそう思ってねえとまた、同じことを繰り返しそうだから」
「え、同じことするつもりなん?」
「もうしねえけど」
そっと撫でられた頬、そのまま大和の顔が近づいてきてそっとキスをした。
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