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「あ〜、やっぱりぃ?でもメグちゃんが佳威クンのこと好きなの佳威クンには関係なくない?問題は佳威クンが誰を好きかでしょ」 これだからリクは、みたいに溜息をつかれた。有紀からものすごい正論を叩き付けられて、悔しさのあまり唸る。そして何故か母親はニヤニヤしていた。 「ていうか話逸れ過ぎだし。母さんいいだろ?一泊してくるだけだから!息子の夏休みが宿題に追われるだけなんて可哀想だと思わないのかよ〜」 「仕方ないわねえ、あんたがそこまで言うなら許可しましょ。うちの方針は可愛い子には旅をさせろ、ですから」 そんな方針初めて聞いた。 「えー!?香織さん激甘〜!リク本当に気を付けてね?なんかあったら電話してね?」 「だからなんもないって!ケーイチも居るって言ってるだろ?」 本当に心配してくれているのか滅多に見ない真面目な表情で見上げてくる有紀の頭をポンポンと撫でる。 撫でられて嬉しいのか不満なのか複雑な顔になり納得してないのが丸分かりだが、考え過ぎだ。 「よっし、そうと決まれば佳威に連絡しよ」 鞄から携帯を取り出しながらウキウキと佳威の連絡先を開く。 あー!これで俺の夏休みの楽しみができた!友達の家に泊まるなんて、何年振りの話だろう。 俺は心踊らせながら、携帯を耳に当てた。 ーーー 「…あーあ、固まってる。どうするんだよ、佳威」 「どうするっつってもなあ。おい、大丈夫か?」 睦人、と呼ばれてハッとする。 目の前には心配そうな表情のケーイチと、困ったように頭をかく佳威が居た。 終業式のあと「んじゃまた連絡するわ」「次会うのは…来週だね」「だな!楽しみにしてる!」なんてキャッキャウフフと別れたシーンが走馬灯のように流れていったが、今なら母親と有紀が反対していた気持ちが分かる。 佳威とケーイチがいるから大丈夫とかそういう問題ではなく、要は俺が今まで関わったことのない世界のご家庭に面喰らわないかということだったのではないだろうか。 漫画やドラマの世界でしか見たことのない世界だったから、少し甘く見ていた。白の革靴に白スーツを着ているような人達は一人も居なかったが、まさか本当に「(ぼん)、おかえりなさい」と声掛けされる場面に出くわすとは… ダークトーンのスーツを決めた、決して人相が良いとは言えない大人の男達が出たり入ったりを繰り返し、擦れ違い様に佳威へと頭を下げるのだ。ドスの効いた低い声が重なる様は圧巻であり、恐怖。ケーイチは慣れているという言葉通り驚かない為、隣でビクッとあからさまな反応をしてしまう俺へと自然と視線が集まる。 視線で人を殺せるのではないかと思うほどの複数の眼力に「もう少し心構えが必要だったな…」と後悔していた。

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