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「いつもこんな格好してるんじゃないのよ?今日は2人が来るって言うから。っぽいでしょう?」 「確かに…あの、素敵です!」 「ふふ。でも和服ってね、気が引き締まるからいいのよ。好きで着てるの。姐さんって呼ばれても違和感ないじゃない?」 そうか。 麗奈さんは姐さんと呼ばれる存在なんだ。 佳威の話からすると麗奈さんがΩなんだよな。 初めからそっちの世界の人間だったのか俺たちと同じ堅気の人間だったのかは分からないが、αの親父さんと出会って姐さんと呼ばれる存在になるなんて…波乱の人生を歩んできてそうだ。 そして、この人は都市伝説みたいな運命の番を見つけた人でもある。 出会った瞬間に分かるとか、何かのキッカケで気付くなんて噂は聞くけれど「この人が運命の番だ」ってどうやって見つけたんだろう。 「一ちゃんは昔からよく来てくれてるんだけど、睦人ちゃんもよくここに来てくれたわね。親御さんは心配されてなかった?」 「睦人ちゃん……あ!俺のところは、全然!大丈夫です」 運命の番に意識が逸れてしまっていた俺は慌てて頷いた。 最終的には許してくれたけど、心配なのは心配なんだろうな。俺より世の中のことを知ってるだろうし…知ってると心配になることも増えていくもんだ。俺は自分のΩを知れば知るほど心配になるし、不安になっていく。それとこれとはちょっと違うのかも知れないけど気持ちは何となく分かる。 帰ったら間違いなく捕まって離してくれないだろうからゆっくり話でもしようかな。きっとドラマの中の話みたい〜と目をキラキラさせるに違いない。 「それなら良かったあ…今日は人が多いから佳威の傍を離れないようにね。一ちゃんも。花火までにはこちらへ戻ってきて、スイカでも食べましょう。無事にお家に帰しますから」 俺を見上げて微笑んだ麗奈さんに、ギュッと帯を締めて腰が締め付けられた。 うぐ…意外と容赦ない。 そのまま後ろであっという間に帯の形を作っていく。 「睦人、似合ってるよ」 「おい、準備できたか?」 浴衣に着替え終えた俺を見て既に一人で完璧に着終えていたケーイチの声と、スパンッと襖を豪快に開き切った佳威が姿を現したのはほぼ同時だった。

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