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「目的もなくΩがαに近寄るのか?」 表情を変えずに問いかけてくる質問に、目の前の男に反抗するのは危険だと分かりつつもカチンときてしまう。 「…Ωはαとは含みなしに仲良くなったらいけないんですか?」 「そんなことは言ってない!」 淡々と喋る口調が一変。 語気を強めた男の反応に驚いた。 「勘違いするな…僕はΩは好きだ。だけど理由もなく近寄って来てくれるΩなんて居ないと思ってる。君たちにとって僕らは大事なパートナーにもなり得るし…恐怖の対象にもなるだろう?」 今までの流れから行けば、目の前の男はΩを蔑んで見ていたのかと思ったのに。 まさかの台詞に呆気に取られ、すぐには言葉が出てこない。 何処と無く寂しさを含んでいるようにも聞こえた。 「それは…そうかも知れませんが…」 「…やはり」 「でも俺はっ…俺は…佳威を利用しようとか、目的があるとかそんなことを考えて仲良くなったんじゃありません」 目の前の男は得体が知れなくて正直怖い。だけど思い違いをされていることをそのままにしておいて平気なほど、俺も器は出来ていない。 「…あなたが誰かは知りませんけど、俺は純粋に佳威と仲良くなりたいんです。俺がΩである所為で、αの佳威には迷惑を掛けました。だけどあいつは笑って許してくれた…それが俺には、凄く嬉しかったんだ…」 ぎゅ、と自分の浴衣を掴む。汗ばむ手の平にさらりとした生地は心地良く、得るのは僅かばかりの安心感。 売り言葉に買い言葉で言い返してしまったが、全て言い終わった後でこれから何をされるのかと自然と手に力がこもった。 ああ…我ながらなんて情けないんだろう。 それでも今この場で伝えるべきことだと思ったんだ。

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