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「つーか兄貴はいつまでここに居るんだ。さっさと自分んとこ戻れよ」
「まだ最後まで見ていない」
「最後まで居るつもりか」
「何せそこの睦人とか言う少年に頼まれたからね!一緒に見たいと」
「……ご、ごめん佳威」
ふん、と嘲笑う瑠威さんが俺を指差した。それだけなら良かったのだが、佳威がこちらを疲れた顔で見てくるものだから仕方なく謝った。
でもこれがみんな幸せになれる最善の選択だと思ったんだよ!…というのは建前で、本音はあの場を収める方法がこれしか思い付かなかっただけだ。
佳威に凭れかかられたまま、ケーイチは左腕に付けていた腕時計に目を落とす。
「多分、次で最後だよ。…ほら」
ケーイチの言葉に合わせたように火薬玉が打ち上げられた。
空気が抜けていくような音が幾重にも重なり、続いて響くのは爆音と眩しいくらいの閃光。暗闇の中から傘が開くように大小様々な蕾が開き、大輪の花へと進化を遂げる。風の影響がないのか正円に広がった。
そしてクライマックスだと言わんばかりに、息継ぐ間もなく次々と打ち上がっていく。
チラリ、と横を見た。
佳威は俺の僅かな動きに気付いて少しだけ顔をこちらに向ける。そのままニカッと笑われて、つい数分前の出来事を思い出して挙動不審な動きを見せそうになってしまった。しかしそれは幾ら何でもあからさまなのではと、何とか記憶を振り払い笑い返すと佳威の視線は空へと戻っていく。
ひらけた視界の先に居るのはケーイチで――
外は既に真っ暗だったのに、綺麗な鼻筋がよく見えた。
ケーイチは俺の視線に気付いているのかいないのか。花火が散り終わる最後まで、こちらを見ることはなかった。
そして俺も、最後に打ち上げられた花火の色が何色だったのかを覚えていない。
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