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「…ってことはケーイチも瑠威さんに俺と同じような事されたんだ?」 「だいぶ昔の話だよ。同じっていうか…まあ、今日みたいに変装した瑠威さんが、佳威が居ない時に現れたんだよね」 「懐かしいな。あの時は佳威がトイレに行っている隙を狙ったんだ。だけど、ハジメは佳威に扮した僕を見てすぐにこう言ったんだよ。“誰ですか?”てね」 「…あの時は瑠威さんの方が少し身長が高かったですし、俺も今同じことされたら睦人と同じ反応しちゃうかもしれませんよ」 「いいや、そんなことはない。ハジメの愛は本物だ。…それに比べて君は」 「…!?」 ケーイチにズレていた筈の矛先が突然俺に向く。やっぱりケーイチはすごいな…と感心していたのに、やっぱりこっちに戻るのか。 「大ヒントのアイスから躓いてマイナス50点だ。疑いもせずのこのこ僕に付いてくるし、押しに弱いのもマイナス点だな。誘惑に勝てないようじゃ浮気の心配が出てくる」 「浮気って…」 瑠威さんの脳内で俺はどうなっているんだろう。ケーイチも似たような事を思ったのか苦笑いしている。 「浴衣は大ヒントだったんだぞ。あそこで分かったところで何の意味もない。アイスには自らぶつかってくるし…言っておくがアレはぶつけようと思ってぶつけたんじゃないからな。…まあ、あの時自分より佳威のことを気にしていたのはプラス20点。脅す僕に正面から物を言ったのも良かった。あれが無ければ今頃君はここにはいなかったんだからな。…ところで君はいつから僕が演じる佳威に違和感を覚えた?」 及第点の意味を教えるどころかマイナス点の説明が大半を占めてるじゃないかと気付いて何とも言えない気分になっている俺に、瑠威さんはそんな質問をしてきた。 完全に気付いたのは瑠威さんの言う通り浴衣に触れた時だ。確かに何となく違和感を感じてはいたが、いつからと細かい話になると…。 数時間前を思い出して、頭を悩ませていると、ふと一つそういえば、と思い出した。 「…あまり、笑わないな、と思いました」 「笑う?」 「はい…佳威結構笑ってくれる事が多いんですけど、あの時の佳威は冷たいっていうか、無愛想?みたいな感じで」 どことなく距離を感じていた。上手く言葉で言い表せないが壁を作られているような。 勝手な予想をすると、俺が振り向きざまにアイスにぶつかったとしても「うわ、悪ぃ睦人!大丈夫か?」なんてまず謝って無事を確認してくれる。 俺も同じように謝れば「いいって、俺も予想してなかった。つか、お前自分の心配しろよ」とアイスで汚れた浴衣を見て笑うんだ。きっと。 「…無愛想、だろう?佳威は。家でも外でも。ケーイチとはよく言い合って素の表情を見せてるみたいだが、愛想は良くないと思う」 瑠威さんが戸惑いを隠し切れない様子で俺を見た。無愛想か…そういえば麗奈さんも佳威のことを無愛想だと言っていたか。 「…睦人には良く笑うんですよ。あいつ。初めて会った、その日から」 今まで黙って話を聞いていたケーイチが、淡々とそう言った。

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