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(第三者視点) 光田家の長男と言えば、界隈でその名を知らぬものは居ないとまでされる有名人だ。 組の総括でありαである父親の血を色濃く受け継いだ息子を、父親と同じ、あるいはそれ以上に冷徹だと言う輩は少なくない。 ただそれは外の人間の言う話であり、実際に組の中に居る人間からの信頼は厚く面倒見がいい。 反面、光田組の名に恥じるような行いや、組を裏切る者には容赦なく、手段を選ばないとまで言われている。 下の者から慕われると同時に、楯突くことは許されない相手だと認識が広がり、どちらの意味でも若頭としての役割を大いに果たしていた。 そんな誰からも一目置かれる存在の瑠威。 彼には心から愛してやまない人物がたった一人だけ居る。 噂の人物の前では別人のように笑い、犬のようにはしゃぐという。これは光田組幹部等の極一部の人間しか知らない情報だ。 「佳威、まだか」 瑠威は最愛の弟が風呂で体を清め、シャンプーの芳しい香りを纏って風呂から出て来るのを心待ちにしていた。 瑠威は弟が大好きだ。もちろん恋情ではない。ただ目に入れても痛くない程溺愛している。年が離れて出来た兄弟だということも大いに関係しているだろう。 髪型や服装、声質を真似れば瓜二つの弟の顔を見る為なら、どんなに手を焼く仕事でも心を無にしてこなしてみせる。 愛が重い、とよく言われるが、重いほど愛が伝わっている事は瑠威にとって誇るべき事であった。 机に肩肘をついて、先程からひっきりなしに鳴る携帯を取り出す。流石にそろそろ出てやらなければ、と感じたようで仕方なく通話を押した。 「なんだ」 『若頭、今どこにいらっしゃるんです?』 「本宅だ」 『……失礼しました。では後ほど本宅の方へ車を回します』 「ああ」 電話の相手は若頭補佐。瑠威が口にした本宅の意味を即座に理解して早々に電話を切り上げた。 本宅に滞在してる間は大抵大切な弟の為に時間を割いている事が多い為、なるべく邪魔をしないというのが直属の舎弟達の間では暗黙の了解となっている。この男の機嫌を損ねて、いいことなど何一つとしてない。本人を目の前にしては口が裂けても言えないがどうにもねちっこいきらいがあるのだ。 「あ?まだ居たのかよ」 忍ぶ気もない足音と共に襖がやや乱暴に開かれ、視線を上げた先には待ち望んでいた佳威の姿。 瑠威の自慢は弟の名前に自分と同じ漢字が一文字入っている事で、気持ちの悪い程兄からの溺愛を受ける佳威は、部屋に兄しかいない事に気付くと怪訝な顔に変わった。 「あいつらは?」 「アイスが食べたいと言うから買いに行かせた」 「…人の友達パシッてんじゃねえよ」 「バレたか」 佳威は兄の嘘をすぐに見抜き、本日何度目かも分からない溜息をついた。

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