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ご執心?ご執心かと言われるとそれはまた… 「…語弊がある気もしますけど、渥のことは離れてからも忘れたことはないです。俺は、一度も」 あいつはどうか知らないけどさ。 昨日の口ぶりからすれば完全に忘れ去られていた感じでは無かったし、ケーイチの言っていた通り当初の反応は敢えての対応であってほしい。 俺の脳内が願望に切り替わった時、灰崎さんが一歩こちらに近付いた。 適度な距離感で何の匂いもしない。香水は付けない派なのか。それが逆に新鮮だった。 「睦人くん」 「はい」 「渥くんとはいつからの仲なんですか?」 「いつ?って…えーと、生まれた時からですかね?同い年で家も隣だったんで、あいつとはずっと一緒です」 「…では初めて会った瞬間は乳児だった、と」 「そうなりますね」 「……彼とセックスしたことあります?」 「セッ…んッ、…っ、はい!?」 唐突過ぎる質問に変なところに空気か唾液かが入り込んで噎せてしまった。苦しさから出た鼻水をズズと啜る。 「異常なくらい快感を覚えませんでしたか?彼の匂いに幸福感や安堵感を感じたことは?」 「ちょ、ちょっと待ってください!そんなこと聞いて一体何になるんですか…!?」 「睦人くん、これは大事な話です。正直に答えて」 両手を掴まれた。俺よりも細くて暖かい手だ。 大事な話だと言い切るに相応しい真剣な表情にゴクリと喉が鳴る。 意図が見えない。 こんな会って数時間の相手にそんな下世話な話…と戸惑いがぐるぐる回るが、灰崎さんの真っ直ぐな瞳から顔を背けることはできなかった。 「……したこと、あります…ヒートの時に。き…気持ちよかった、です。でもあれはヒートだったし」 「匂いは?」 「…安心しました。昔からよく知る相手だからだと思いますけど…」 なんの羞恥プレイかと思うような質疑応答に何とか答えると、数秒考えるように黙った後、灰崎さんは「すごいな」と零す。 掴まれていた手を離された。 「だから、わざわざ偵察みたいなことしにきたんですね。誰かに関心を示しているところを初めて見たので珍しいなと思ってたんですよ。社の女性にも実の弟にもあまり関心がないようだったので…なるほど。謎が解けました」 「…誰の話してます?」 「渥くんです」 「……すいません、俺話についていけてないんですけど」 現状把握が困難なことを素直に伝える。そんな俺を見て、灰崎さんは綺麗に笑った。 「睦人くんと渥くん、もしかして運命なんじゃないですか?」

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