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(第三者視点) 「ミツ。遅い」 「申し訳ございません」 扉を開けた瞬間、不機嫌そうにデスクの向こうから名を呼ばれたミツこと灰崎(みつる)は、感情を揺らすことなく謝罪した。 小言を言われるのは想定の範囲内だ。 しかし広々としたデスクの上で電子タブレットを触っていた、灰崎の上司であり代表取締役という肩書きを持つ黒澤恭介(きょうすけ)は、灰崎の返答に眉根を寄せた。 数日前に行われた食事会の折に見せた雰囲気とは異なり、刺々しさが伺える。 「5分以上待たせるなと何度言えば分かる」 「私もそう暇ではないんです」 「忙しいとでも?いつになく楽しそうに部屋を出て行く姿はなんだ、遠足か?」 「ピクニックには最高の天気ではありますね」 「残念ながら夕方からは雨だ。行くぞ」 「ピクニックにですか?」 「会食に決まってるだろう。秘書の癖に職務怠慢とはいい度胸だな」 「ああ、もうそんな時間ですか。楽しい時間はあっという間ですね」 親密な間柄が見え隠れする隙のない掛け合いに、間を置いたのは黒澤だった。 黒張の椅子から立ち上がり、わざとらしく肩を落とす秘書に近付いていく。すぐ近くで顔を寄せようとした黒澤に、灰崎は絶妙なタイミングで顔を逸らした。 「仕事中です。それに私はこれ以上渥くんから嫌われたくはないんですが。嫌がらせですか」 「…聞かれちゃまずいことでも話していたのか」 「ええ、見事にバッドタイミングでしたよ。まさかとは思いますが、昨晩私があなたに黙ってキャバクラに行ったことへの報復だとしたら大変悪質な行為です」 「笑わせるな。許可なくキャバクラに行く方が悪質だろう」

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