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賛成の意を示す拍手が教室内に響き渡るなか、教卓に立っているのは先生ではない。
先生並みに人前に立つことに慣れた様子の委員長、ケーイチだ。
その後ろで黒板に女子独特の丸みを帯びた字で書かれたのは『Non-alcoholic bar』の文字。
どこの高校もだいたいそうだと思うが、模擬店は二年生から許可される。
そうなれば出てくる意見は比較的カフェやら屋台やらと、フードやドリンクを提供したがる意見が多かった。
その中でフード系は結構人数が必要なんじゃないのかな、というケーイチの助言。要はちょっと面倒くさそう、だと俺は勝手に思っている。
そしてバーの単語を付けるならバーテンダーの格好ができて楽しそうだね、のこれまたケーイチの一言で結果ドリンクに特化するという流れができあがった。
もう少し揉めるかとも思ったが、ケーイチの巧みな話術…は怒られそうだな。
ケーイチが上手にまとめてくれたお陰であっという間に文化祭の出し物が決まった。
ドリンクだけならそう人数は必要ないし、皆多くの時間を学内を回ることに使える。ぱっと見た感じ簡単そうだし、俺も最終的にまとめられた案には大賛成だ。
文化祭の開催は来月。まだまだ時間はたっぷりとある。一度企画を提出し許可がおりれば次回、ドリンクの種類について話し合うということでホームルームは無事終了した。
「佳威」
俺の前の席に戻ってきたケーイチが、机に伏せって爆睡をかましていた佳威を呼ぶ。
毎度のことと呆れているのか、表情にあたたかみはない。
「…あ?」
「あ?じゃないよ。文化祭の出し物決まったから」
「あー…そ。演劇じゃなけりゃなんでもいいわ」
「残念。今年は演劇です」
「は!?マジで?嘘だろ」
一瞬にして覚醒した佳威がケーイチにガンを飛ばす。
本人にその意思はないのかもしれないが、寝起きの佳威、凶悪。
「嘘じゃないよ。ねえ?睦人」
「…ん!?うん、そうそう!演劇に決まった。白雪姫。佳威は王子様役だってさ」
「白馬の王子様だよ。白雪姫との熱いキス込み。まあ、寝てる佳威が悪いよね」
「………泣かすぞ、てめえら」
ケーイチからの突然の巻き込みに乗っかってみたが、佳威は思ったより冷静だった。
Non-alcoholic barの文字が残されたままの黒板を見付け、俺たちの嘘にあっさり気付いてしまう。
「俺、佳威に泣かされたい趣味はないんだけど」
「俺も別にお前の泣き顔が見たいわけじゃねえよ」
「睦人の泣き顔は?」
「は?」
「え?」
「泣き顔、似合いそう」
にっこり微笑まれて、冗談なのか内に秘めたる本音が漏れたのかどちらともつかず一瞬固まる。「恐らく…不細工に磨きがかかるだけかと」と、なんとか返事を返した。
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