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「なにがバカなんだよ」 「ヒ!?」 負のオーラ満載の溜息を吐いてる後ろから、低音で声を掛けられ面白い程に体が飛び上がった。 「佳威…び、びっくりした」 「そんな驚かれたらこっちがビビるわ!」 「ごめん。ちょっと意識が違うとこに…」 「…黒澤にか?あいついつ見ても涼しそうな顔してるよな」 一瞬渥に声を掛けられたのかと思ったが、トイレの入り口に立っていたのは佳威だった。 佳威はいつのまにか遠くなった渥の姿を見つけ呟く。確かに渥が気温でへばってるイメージないかも。顔にも汗かかないし、羨ましい。 俺の返事がないのを肯定と捉えたのか、すぐに顔をこちらに戻すと「トイレまだ?」と尋ねられた。 「いや、終わってる」 「じゃあその足はどこに向かおうとしてんだよ」 「…個室に」 意味不明な受け答えをする俺に、佳威が怪訝な顔を見せた数秒後、軽く吹き出した。 「なんだそれ、終わってんなら戻ろうぜ」 いい顔で笑う佳威に恥ずかしくなりながら頷いて俺はトイレを後にする。 佳威は既にトイレから離れていたので出てすぐ横に並んだが、佳威は何しに来たんだろう。トイレはいいのか。 「お前らなんかあった?」 教室に向かって歩き出しながら佳威が軽い調子でそんなことを聞いてきた。昨日何食べた?とか、今日の5限なんだっけ?みたいなノリだ。 「え。…お前らって俺と…?」 「そんなすぐに分かんないほど色んな奴となんかあったのかよ」 ない、とは言い切れない。 しかもつい先程渥を見たばかりだったので、正直どちらのことか分からなかった。 佳威とだって何もなかったとは言えないが、お前らというくらいだ。佳威は含まれていないんだろう。 「ケーイチ?」 「黒澤ともなんかあったのか?」 「や!ないない!ないし、ケーイチともなんもないよ」 「喧嘩したとかじゃねえの?」 「ケーイチと?するわけないじゃん!」 「本当か?お前最近元気ねえし、ケーイチは機嫌悪ぃしよ。あいつ結構頑固なとこあんだろ?ガチの喧嘩とかしても絶対向こうから謝って来ねえんだよ。俺も謝んねえからだいぶ長引く。もし納得できねえことあったなら言えよ。加勢してやるから」

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