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15「A」◎

抑えきれない高揚感と、自分だけを一心に見つめる瞳に我慢できずキスをした。 話し掛けるなと言った口で口付ける。矛盾した行為も甚だしい。 だが、どうしても止められなかった。 ――俺のΩ。俺だけの、俺しか受け入れらない睦人にできる。 溢れ出るアピールのフェロモンが、こんなにも愛おしく感じたのは初めてだ。 なのに。 ……俺は、お前を幸せにしてやれない。 どうしても(よぎ)ってしまう過去の記憶。 拭い去れないΩへの不信感は、頭のどこかで息を吹き返す。 睦人は違う。思い浮かべる相手とは違う人間だと理解している筈なのに受け入れられない。掛ける言葉が無意識に刺を持つ。 誰よりも大切にしたい相手の筈なのに、今以上に傷付けてしまうかも知れない。 わざわざαが集まるこの学園に転入して来たのだ。きっと番を探しているのだろう。 番を作る気のない自分が、どうやって幸せにしてやればいいのか分からない。 傷付けるだけならば、このまま距離を置くべきではないのか。 そんな葛藤の中、渥の思考を嘲笑うかのように睦人への接点は増えていった。 『あのー、違ったらごめんね。もしかして、渥くん、じゃない? 渥くんだよね? おじさんのこと覚えてないかな。小学校が一緒だった、りっちゃ…睦人の父親です』 運命に気付いた日。睦人の父親である亮太と再会したのは偶然だった。 渥にとってほぼ家に居ない父親以上に、父親らしい振る舞いをしてくれた亮太。幼い渥達にとってはとても大きな存在で、友達の父親というだけでは済ませられない程、大切な相手なのだ。 あの頃と変わらない包み込むような穏やかな笑顔と、肩に触れる優しい手つきにどうしても拒否する事ができなかった。 『りっちゃんすぐ帰って来ると思うから、ご飯でも食べながら待っててくれる? 渥くん来てたのに帰ったなんて知ったらあの子絶対拗ねると思うのよね。昔もあったんだから。なんで引き留めてくれないの、遊びたかったのにって。すぐ隣だし毎日会ってるってのに、ほんと昔っから渥くんのこと好きなのよねえ』

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