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佳威と二人顔を合わせたのが随分前のように感じる。 順調に行けば今頃、手には圧縮された冬用の布団もしくは毛布を持って、何事もなく帰路についていた筈だ。 しかし、今俺の手には布団はもちろん毛布すら存在していない。 ラーメン屋を出た時と変わらない財布と携帯のみを所持して、住宅街をコソコソと…表現がよろしくないな。 忍びのように物陰から物陰へと移動を繰り返していた。…表現力が乏しいのか? 俺は。 「駄目だよな……こんなストーカーみたいな真似。良くないよなあ」 道行くサラリーマンや子連れの若い母親達に不審がられながら、壁から顔だけ覗かせる先には一人の男の姿。 伊達だと思われるべっ甲でできた縁の細いメガネを掛けて、まるで変装の甘い休日の芸能人のような出で立ちだが、さり気ないオシャレに抜かりはない。 丸屋から出た時、有紀はかなり遠くに居たのだが、それでも見つけてしまったくらいだ。制服を着ている時より目立っているのではなかろうか。 それよりも俺が気になっているのは、風邪だと聞いていたのに元気そうに出歩いていることだろう。 「ここまで追ってきといて今さら何言ってんだ」 「佳威までこんな事に付き合ってくれなくても良かったんだぞ。せっかくの休日なのに」 「暇だって言っただろ。それより、前。見失う」 ふらふらとナチュラルに尾行を始めた俺を心配してか、佳威が後を追い掛けて来てくれた。 非常に申し訳ないので佳威は帰ってくれと頼んでも「いいじゃねえか。面白そうだし」と笑って聞いてくれない。 本当に興味があるのかどうかは別として、説得してる間に見失ってしまいそうだったので、仕方なくそのまま後を追って来た。 俺の誘いを嘘くさい理由で断った癖に、どこに向かってるんだ。あれから返事も無いし心配してたんだぞ、こっちは。 もう一つ言えば連日のあからさまに避ける行動。今日だって来ないときた。 何故来ないのか。 そんなことは簡単だ。 単純に来たくないから。 ――俺が居るから? なんでそうなるわけ?

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