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「お前どうしたんだ? 最近学校来てんのか? 姿見ないから心配したぞ」 「ガッコは行ってる。バイト、行きたくないからガッコはちゃんと行ってる」 「……へえ」 ますます心配になるんだが。 バイトに行きたくないということは親父さんか渥と何かあったんだろうか。 俺が避けられてた理由には繋がらないけども。 「あのさあ」 にしても分かりやすい奴だよな。テンションが低いから何かあったのだとすぐ分かる。 兄弟だというのに随分な違いだ。そもそもあいつはテンションの上がり下がりもいまいちよくわからない。 「お前格好良いから相手も合意の上でしてるんだろうけど、あんまり無茶するなよ。後で恨まれて刺されたなんて聞いたら俺、寿命縮むぞ」 何をやらかしたのかまでは聞かないが、一応先程の泣いていた彼の件を遠回しに触れた。 リビングの入り口に立ったままで有紀の様子を伺うが反応はない。どうしたもんかなあ、と考えながら周りを見渡す。 相変わらず部屋は散らかっているし、遮光効果抜群のカーテンは締め切られていて電気もついていない。 キッチンは未だ一度も使ったことがないのか、道具は何一つ無かった。有紀が料理するなんて想像できないし想定内だ。 一見してそこまで変わったところは見受けられなかったが、ただ一つだけ。 「これ……」 有紀に視線を戻そうとした時に、ふと自分の足元近くに気になるものが見えた。いつからそこにあったのか。 どうりでいくら連絡しても返事が返ってこないわけだと納得した。 「……ねえ。リクは俺のなんなの」 リビングの壁にぶつかったのか画面全体がヒビ割れ、小さな破片が散らばる携帯電話が床に放置されていた。

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