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満足気に笑いながらさらに肩をぎゅーと抱かれた時だった。 佳威の顔が首筋付近に近付いて、まるで犬みたいにクンクンと匂いを嗅ぐ。 「香水でもつけてんのか?」 「え、いや、何もつけてないしつけてるのは佳威じゃ、…て、ちょっ、と、くすぐったい!」 顔周りに佳威の髪の毛が当たって痒い。助けてくれ!とケーイチを見ると興味津々といった顔でこちらを見ていた。 「いい匂いするの?ちょっと俺も…」 「ぎゃあああお前らやめろーーー!!」 両側から匂いを嗅がれて悲鳴が出た。 男が男の体臭嗅ぐってどんな罰ゲームだよ! 「んー…?いい匂いって柔軟剤っぽい匂いのこと?睦人柔軟剤何使ってるの?」 「え…柔軟剤の銘柄までは知らないけど…なんだ、服の匂いか」 「いや、服の匂いじゃねえよ。柔軟剤っつか…なんだろすごい甘い匂い…?」 そう言われた瞬間に喉がヒクッと痙攣したのが分かった。 俺は慌てて2人の間から飛び出す。 「だー!もうお前らやめろよ!俺の匂い嗅いでないでさっさと飯食おうぜ!佳威は腹減りすぎ」 「ごめんごめん。佳威が変なこと言うからつい…早く行こう」 「んだよ、すげえいい匂いしたんだからしょーがねえだろ。まあ、いいや!あー、腹減った」 最初腑に落ちないようだったが佳威はすぐにご飯の方に意識が向いたみたいで、足取り軽く歩き出した。 ーーー 「え!?ケーイチって学年1位なのか!?」 「そうそう、こいつ頭だけは良いんだよ」 「頭だけで悪かったね」 話題の中心人物であるケーイチはふん、と鼻を鳴らして定食の焼き鮭をつついた。 俺は驚きでつるんと落としたうどんを、再び掴みながら尊敬の眼差しを向けた。 「へ~!凄いな!委員長してるから頭はいいんだろうなって勝手に思ってたけど」 「委員長なんてみんな面倒臭いことしたくないから、押し付けられただけだけどね」 「よく言うよ。自分から進んで手ぇ挙げてたじゃねえか」 佳威は大盛りのカツ丼をもう3分の2以上食べきっている。さすが腹が減ったと煩かっただけのことはある食べっぷりだ。 「どうせみんなやりたくなくて時間が過ぎるだけなんだし無駄な時間をかけたくなかっただけだよ」 ケーイチはどうも物事を論理的に考えるらしい。 「でも、俺はケーイチが委員長してくれてて良かったよ。転校して最初って何かと心細かったけど、ケーイチみたいな優しいヤツで安心したもん」 「俺も睦人に喋りかけるキッカケができて委員長やってて良かったって思ったよ」 にっこり笑いかけられて、思わず照れた。 それを佳威が面白くなさそうに食べきった丼をドンッと乱暴に置く。というか食べるの早いな。 「お前らなに恥ずかしいこと言い合ってんだよ。他所でやれ他所で」 「なに、佳威。ヤキモチか?」 「はあ?」 「いやいや、ちょっと待て!そのくだりはさっきもやっただろ!はい、終わり!もうこの話終わり!」

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