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「うーん…」 「どうかした?」 「あっ、いや、」 考え事をしていた為かつい唸ってしまっていた。焼き鮭定食を食べ終えたケーイチが怪訝そうな顔でこちらを覗き込む。 「やっぱりうどんだけじゃ足りなかったんだろ」 ほらみろ、みたいな感じで佳威に茶化された。 「佳威と一緒にするなよ。でもほんとどうしたの?具合悪い?」 「違う!違う!全然平気だし体調も悪くない!ただ…」 心配そうな顔のケーイチを見て、言葉に詰まる。 ――あれ?てか、あれだよな。 先生に聞くのは最終手段にしたいが、こいつらになら聞いてもなんら問題無いんじゃ…というか問題ないじゃん。 俺、気付くの遅い! 「あのさ、変な事聞くかもだけどさ」 「うん、なに?」 「んだよ遠慮すんな」 2人の視線がこちらに集中する。 「この学校に…荒木…」 そこまで言いかけたところで突然、食堂内がざわつきだした。 あからさまに色めき立つ女子達に、どういう気持ちなのかは分からないがそわそわしだす男子。食堂内は学年問わず利用しているが、みんな落ち着きなく一様に入口側を見ている。 「え、なに、なにが始まんの?」 お祭り? そんな楽しそうなこと始めるならなんて楽しい学校だろ。わっしょいわっしょいと神輿が運び込まれるのを想像して思わず吹き出しそうになる。 しかし、2人ともなんとも言えない渋い表情で入口を見ていた。 「あ~、珍しいな。こっちに来るなんて」 来週来ると思ってたのに…とケーイチが呟く。 「なになに?何が来るの?有名人?まさかほんとに神輿?」 こんだけ大きい学校なら芸能人の一人や二人居てもおかしくはないだろう。 「神輿?何言ってんだお前」 佳威が笑う。ケーイチほど深刻そうな顔はしていなかったが、すぐに笑顔を引っ込めた。 「だって、なんか、…みんな変じゃない?」 「ああ。…まあ飯食い終わってて良かったぜ。睦人も飯食べ終えたんだろ?じゃあもう行こうぜケーイチ」 「そうだね。睦人いい?」 「う、うん。そりゃ、いいけど…なんか気になるんだけ、ど…っ!?」 その時だった。 ぶわぁとものすごい魅惑的な香りが鼻腔に広がる。甘いフェミニンな花の香りのような、ムスクのようななんとも言えない多数の濃い香りが鼻を抜けていった。

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