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「俺はβだよ」
「…だよな」
佳威の瞳が一瞬揺れたような気がした。
「――おーい!」
ハッと声のした方を向くと俺たちが出てきた場所から、ケーイチが手を振っていた。
片付け終わったんだ。俺も手を振り返し、ケーイチはすぐに走ってこちらに向かってきた。
「お待たせ。ていうかここで待っててくれたんだね。教室で良かったのに。ありがとう」
「ケーイチの方こそ片付けごめんな、ありがと」
「気にしないで。それよりフェロモンにやられた光田クンは元気になった?」
「うっせ。もうだいぶ良くなった。…悪かったな」
「いーえ。ところで2人で何話してたの?」
ケーイチが首を傾げる。
「あー、佳威の番探しの話と…」
「おい、俺は別に探してるわけじゃなくて、親父たちがうるせーってだけの話だからな!」
「へえ、佳威話したんだ…いいよねえ、番契約。αの特権だよね~」
「そうそう、んであとは俺がβだっていう話」
「え?」
「え?」
ケーイチが何言ってんだこいつ、みたいな顔をして見てくるので、俺も思わず同じような顔で見つめ返してしまった。
「な、なんだよ。俺なんか変なこと言ったか?」
「睦人、βなの?」
「そうだよ。どう見てもαじゃないしβじゃん。これでも昔はαだと夢見てたんだからあんまり言ってくれるなよ」
「…あー…うん、そっか。そうなんだ。じゃあ俺と一緒だね」
なんだか意味深に言葉を濁すとケーイチは「じゃあそろそろ戻ろうか!」と教室に向かって歩き出した。
「ケーイチどうしたんだろ…変な奴」
「あいつはいっつも変だろ」
多分、そう思ってるのはお前だけだ。俺会ったの今日が初めてだし。
もうすっかり顔色の良さそうな佳威に、心の中で突っ込みを入れて俺も立ち上がって歩き出した。
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