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でも佳威はαだからといって俺に対して傲慢な態度を取らないし、家のことも表に出してこない。
むしろただ普通の格好いい友達だ。見た目は少し怖いかも知れないが。
「じゃあ今度の休みに睦人を俺の実家に連れて行くわ」
「え!?マジかよ。…よ、よし。ビビらないように頑張るな」
「頼むぜ。まあビビってる姿見るのも面白そうだけど」
さらりとS発言をされて、返す言葉を探していると、突如前から知らない声に呼び止められた。
「おや、どこの男前かと思ったら佳威じゃないか!今日は珍しい子を連れているんだな」
おっさんの茶番台詞みたいなのが聞こえてきて、パッと前を向くと前方から一際大きく目立つインテリ系な男子生徒と小柄で可愛らしい女生徒のペアがこちらに歩いてきていた。
その男子生徒は一目見ただけで、αだと分かった。αは纏う雰囲気とその整った顔立ちですぐに分かる。
そして横に立つ女の子は、近くに来れば来るほど可憐な美少女だと分かった。
「矢田か」
矢田、と呼ばれたその生徒は佳威の次に俺を見て高い鼻にかけてある眼鏡を中指で持ち上げると白い歯を見せて笑った。
「君が噂の転校生か。会えて良かった」
「へ?噂?」
噂を立てられるほど目立った覚えは無いが。
「ケーイチ以外を連れ歩かないあの佳威が、転校2日目の転校生と一緒に登校してきたって朝から話題で持ちきりだったんだよ」
「そ、そんな噂が…」
あれを他の生徒にも見られてたのか、うちのクラスの奴らが周りに言い回ったのかは知らないが、そんなに早く校内に広がったのか。
まあ、そもそも噂というか事実なのでなんとも言い難い気分なのだが。
「もしかして、その子が君の番候補かい?」
「は!?」
思わず大きい声が出た。君の、と言いながら矢田の視線が佳威に戻る。
「ちなみにこの子が俺の番候補NO.1のミキちゃん。可愛いだろう。最近出会ったんだ」
そう言って矢田は隣のミキちゃんをキュと抱き寄せた。小柄なミキちゃんは体の大きな矢田に腕を回されてまんざらでも無いように頬を染めた。
か、可愛い…
「やはりΩはαの女より従順で可愛げがあるな。もちろん、顔も可愛いだろう?もちろん夜もとっても可愛いんだよ」
「やだ!…もうっ」
ミキちゃんがパッと両手で顔を隠す。小さく細い手では隠しきれなかった耳が真っ赤だった。
ええーなに…ほんと可愛い……じゃなくて矢田って奴ただの自慢だろ!惚気だろ!ミキちゃんが可愛いからまだ許せるけど、見せびらかしたくて一緒に歩いてるの丸わかりだっつーの!
と心の中で叫ぶ。
そんな俺の悶々とした気持ちが表情に出ていたのか矢田は話を元に戻してきた。
「ああ、すまない。ついついミキの話に夢中になってしまった。ところで、君はもちろんΩなんだろう?」
話が元に戻るとそれはそれで面倒臭いことになってしまった。
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