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この学校には男女それぞれ更衣室が設けられている。中は広く空気清浄機でも設置されているのか不快な汗や制汗剤が混ざりあった匂いが全くしない上に、快適なエアコン付きだ。 なんなら奥にはシャワー室も複数完備されているらしい。 クーラーのおかげで更衣室の中はひんやりと冷たい。肌を露出すると夏だというのにぞわっと寒気を覚えた。 ちょっと設定温度低くしすぎなんじゃないか。 「うっ、寒っ」 「………睦人お前…」 寒さで一瞬震えた俺の体を佳威がまじまじと見つめてきていた。佳威はもうすでにライトグレーのTシャツに身を包んでいる。 この学校のジャージはOBでもある有名なデザイナーがデザインしたらしくTシャツはライトグレー、その他は黒を基調にネイビーのラインが入ったシンプルで格好いいデザインになっている。 佳威みたいに身長も高く手足がすらっとした人間が着るとほんとに様になる。多分このデザインなら俺が着てもそこそこ見えるようになる、気がする。 そんな事を考えながらTシャツに手を伸ばすと、横から佳威の手が無遠慮に俺の腰をガシッと掴んだ。 「ひ…!?」 突然のことに変な声が出る。 佳威は特に気にした様子も無く腰を掴んだまま、少々呆れ気味な声をあげた。 「おっ前…も細いな~。ケーイチのこと言えねえぐらい貧弱だな」 「うるさいな。俺を比較対象に出さないでよね。…でもほんと睦人腰細いね~」 そう言ってケーイチまでも近くに寄ってくる。 「いや待って。なにこの屈辱的な感じ。…俺の成長はこれからなんだよ!今に見てろよ!ムキムキになってお前ら見返してやるから!」 「睦人はこのままでいんじゃね?まあもうちょっと食っても良さそうだけどな」 「そうそう、ムキムキな睦人なんて見たくないしね」 「…だからなんでそういう時だけ意見が合うんだよ…いい加減離せ!風邪ひく!」 「おっと、わりぃわりぃ。つい」 「佳威はすぐに睦人のこと触るねー、セクハラで訴えていいよ。俺の知り合いに弁護士いるから紹介するよ」 弁護士の知り合いがいる高校生ってどういうことだ。 「仕方ねえだろ。触りたいものは触りたい。多分俺、睦人なら抱けるぞ」 「あ、は、はあ!?」 あまりにストレートな発言に思わず顔が赤くなった。そんな俺をケーイチがバッと佳威から離す。 「離れて睦人!こいつヤバイ!」 「うるせーなー。睦人からいい匂いがすんのが悪い」 「いい匂いって…」 ケーイチがちらりと俺を見る。 俺は少し引き攣った顔をしていたかもしれない。 「バーカ嘘だよ。お前ら本気にしすぎ。つかほんと早く服着ねえと風邪引くぞ」 そう言って佳威が俺のTシャツを投げて寄越す。 「あ、ありがと。ていうかっ…ほんとに俺が風邪引いたら佳威達のせいだからな!」 「えっ!?佳威達、って俺も?俺は睦人のこと守ったつもりだったんだけど」 しょんぼり項垂れるケーイチの後ろで俺は急いでTシャツを着た。 下ろし立てのそれは室内の温度と同じく、鳥肌が立つような冷たさが肌を覆った。

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