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第4話

午後の授業もようやく終わって俺たちはそれぞれ帰る支度をしている所だった。 「浅香ちょっといいか?」 先生が教卓からこちらに手を挙げている。 俺は帰る支度を終えた鞄を机の上に置いて先生の元に向かった。 「ちょっと悪いんだが、渡し忘れてたもんがあってな職員室まで一緒に来てくれないか」 「はい、分かりました」 後ろを振り返り、こちらを見ていたケーイチと佳威に「先帰っといて」と伝えると俺は先生と一緒に教室を後にした。 先生は職員室の前に着くとここでちょっと待っててくれと一旦一人で入り、何かの書類と鍵を持ってもう一度廊下に出てきた。 「隣の生徒相談室が空いてるからそこに行こう」 なんだろう。職員室じゃできない話なんだろうか。 不思議に思いながらついて行くと、黒張りのソファと机が並んだ生徒相談室へ通された。 「まあ、座って」 先生がそう言いながらエアコンのスイッチを入れる。すぐに冷たい風が流れ込んできた。 お互いソファーに腰掛けると、先生が少し皺の入った穏やかな顔で話し始めた。 「浅香、学校はどうだ?まだ二日目だし分からない事も多いだろうけど、なにか困ったことはないか?」 「いえ…特には。友達が色々教えてくれるので助かってます」 「そういえば委員長と仲良くしてるみたいだな。彼ならわたしも安心だよ。…ああ、それと」 遠回しに、じわじわ近付いてくる。 なんとなく何を言われるのか予想のついた俺はゴクリと唾を飲み込んだ。 「番探しは順調かな?」 ――ほら、やっぱりだ。 俺は膝に置いた手のひらをギュッと握り締めた。 「話によるとさっそく光田とも仲良くなってるみたいじゃないか。彼は優秀なαなんだけど、どうも他人を寄せ付けないところがあるみたいでね…少し心配をしていたんだよ」 「カ…光田くんも良くしてくれてます。番とかは、まだよく分からないですけど…」 「そうか。まあこの学校には他とは比べものにならないくらいα生徒が在籍しているからね、きっといい子が見つかるよ。意外とΩ性を求めてる子はいっぱいいるからね」 「………はい」 小さく答えて、俺はそっと下を向いた。 そう、俺のバースはβなんかじゃない。 10歳のあの日、届いた検査結果にはこう書かれていた。 【検査結果:Ω - オメガ - 】 そして、指定の病院で詳しい教育を受けるように、とも。 Ωはαとは違って専門の学校はない。 そんなところに通っているのが知られれば性犯罪に巻き込んでください、と言っているようなものだからだ。 なのでΩに関する知識はいたるところにある病院のどこかで学ぶようになっていた。 それも桐根学園のように数年に渡って学ぶことはない。 ただ、発情期のことやその際の対処の仕方、番契約のやり方などについてだ。ちなみに俺はバース検査をした病院でそれらについて学んだ。 実を言うと、αがたくさん集まるこの高校への転校は、父の転勤が関係してるのはもちんのこと、αである渥が在籍しているであろう可能性と、俺がΩだということも大いに絡んでいる。

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