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この国は優秀なαの数を増やすことに物凄く重点を置いている。 他国に負けない産業と技術の発展。企業の進出、それにはαの力がどうしても必要であった。 α同士は高確率でαの子が産まれる。α同士の結婚なのでどちらもエリート、政略結婚なども多々行われていた。またαの血を残すことに誇りを持っていて今でも純潔を守るなんて言ってαとしか交わらない人達もいる。 αとβでいうと、これはほぼβであり、まれにαやΩが産まれることもあった。 β同士では、これもほぼ95%の確率でβの子が産まれる。 俺は両親がどちらもβなので、残りの5%の確率で産まれたある意味奇跡の子だ。αであれば真の意味で奇跡の子だが、人生なかなかそううまくは行かない。きっと先祖のどこかにΩが居たんだろう。 そしてαとΩ。これに関しては100%産まれてくる子はαとなる。 どういう遺伝子が関係しているのかは、研究が進められてはいるものの未だ判明されてはいない。だが、この事実が発見されてからΩの地位はわずかに向上した。 もちろん、発情期などのせいでなかなか社会進出できないのもまだまだ実情ではあるけれど、国としては100%αが産まれ、番としても契約ができるこの二つの性を貴重な組み合わせだと発表したのだ。 だからか、この学校ではα性とΩ性の番探しを積極的に推奨していた。 学校案内にもそのことに関して書かれているのを見つけた程だ。 この学校はα贔屓はもちろん、Ωに対しても優遇してくれる点が多々ある。 ただΩはどうしても性の対象にされやすいため、Ωの優遇制度の内容はΩにしか伝えられない。逆にαはαだとΩが気付きやすいように、優遇内容が隠されること無く全体に広まっているみたいだった。 「それでだな、浅香は隣の生徒寮の存在は知っているか?」 「生徒寮…あ。あの大きい寮のことですよね?」 「ああそうだ。聞いたかも知れないがαには無償で部屋が提供さされるんだが、実はΩもその対象でな。浅香の家は学校の近くだし、家から通うと言っていたから」 言うのが遅くなって悪かった、と言って先生は職員室から持ち出した銀色に輝く鍵を机に置いた。 カチャンと響く金属音。 「Ω性の子達は発情期(ヒート)があるからね…いくら三ヶ月に一度と決まっていても突然周期がズレることもある。家に帰れない時に逃げ込む場所も必要だろう」 「ヒート……そうですね」 俺は現在17歳だが、まだ発情期(ヒート)が起きた事がない。 早い子だと15歳くらいから始まるらしいが、それが始まる気配も無かった。 でも俺がΩであることには変わりない。いつかヒートが来た時の為に逃げ込む場所があるのは心強かった。 「一度部屋を覗いてみるといい。場所の確認も必要だしな。家具はある程度揃っているから」 「分かりました。この後行ってみます」 俺は机に置かれた先生の体温でぬるくなった鍵を、そっと握り締めた。

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