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07

「さあ!特製のコーヒーだ!味わって飲むといい!」 そう言ってなんだか高級そうなカップに注がれたコーヒーを渡された。 いい豆を使っているのか、香ばしい香りが部屋中に広がっていた。 「どうも…」 矢田の部屋はモノで溢れかえっていた。汚いわけではないが、生活感に溢れるというか、女の子のものであろう私物や雑誌が乱雑に置かれている。 彼女と同棲してました感満載の部屋だ。年齢イコール彼女なしの期間が同じな俺には少々刺激が強い。 あの、あれはもしやブ、ブラジャ… 今俺が座っているソファーにも女性ものの服が掛けられていたが、先に矢田がごっそり掴み上げて違う部屋にポイッと投げ込んだので、問題なく座れている。 矢田はもう片方の手に自分のコーヒーを持って俺の横に腰かけた。 「………近くない?」 ケーイチとは違い無遠慮に近い範囲に腰を降ろされて少し嫌な気持ちになる。 それだけでなくやはり相手はαなので、αの匂いに少しクラリとしてしまう。いい匂いに感じるわけではないが、どうしても反応してしまうのだ。 「近くないと話ができないだろう。女の子じゃあるまいし恥ずかしがることはない」 「いや別に恥ずかしがってるわけじゃないんだけど…」 ただ嫌なだけです、とまでは言えずズズズ…とコーヒーを啜る。 そんな俺の横顔を矢田はソファーに腕を回してまじまじと見つめてきた。 くそ~ソファーに腕を回すな!こっちを見るな! 「…えーと…で?あの子と別れたのか?」 気まずくて自ら話振ってしまった。すると矢田は思い出したようにコーヒーを力強くガチャンッと机に置く。そんな乱暴に…カップ割れるぞ。 一応俺も合わせてコーヒーを机の上に置いた。 「そうだ!別れた!このαの俺を振るなんて信じられん奴だ。そう思うだろう?」 「はあ…」 そんな自信満々なくせして振られたのかよ。 ミキちゃん、君とは一回しか会ったことないけど気が合いそうだ。 「…しかしあんなに性格も良くて可愛い女は久しぶりに会ったんだ。ミキは最近のΩの中じゃ一番の番候補だったんだが…」 しかもどうやら矢田はミキちゃんのことを引きずってるらしい。見た目に削ぐわない女々しさだ。 でもまあ確かにこんなちょっとあれな奴でも遺伝子はαだ。ミキちゃんはΩだと言っていたし、αの彼氏なんて一度捕まえたら離したくないくらいだと思うんだが…。 そんな風に考え出したら気になってしまってつい聞いてしまった。 「ちなみに、なんで別れたんだ?」 「………ところで君、名前はなんて言うんだ?」 質問に質問で返された。 というか今さら!? 部屋まで連れこんどいて今名前聞くの!? 俺は心の中で叫びながら矢田の適当さにうんざりしてしまった。 逆に名前も知らないようなやつをよく部屋に上げようと思ったな。 「浅香だけど…」 「浅香なにくん?」 「…………睦人」 「そうか、睦人。君に聞きたいことがある」 案の定下の名前で呼ばれて、この数分の間に二度目の嫌な気持ちになっていると、矢田にガシッと筋肉のしっかりついた腕で肩を抱かれた。 「うわっ…」

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