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「俺にはねえよ。矢田んとこ帰れ」 「春行くんとは終わったの…っ、お願い、お話だけでも聞いて…?」 あいつハルユキって名前なのか。どうでもいいけど矢田のフルネームを知ってしまった。 「あー…えーと、島山さん?」 見かねたケーイチが口を開く。 「きみは渓くんだよね?ミキのこと知ってるの?」 「まあ、一応…。島山さん俺たちこれから予定あるんだよね。また今度にしてくれないかな?」 ケーイチの後ろで、佳威がそうそれそれ!よく言った!と言わんばかりに頷く。 「ん~っ渓くん!ミキのお話すぐ終わるから…ちょっとだけ………だめ?」 コテンと首を横に傾げてケーイチを少し潤んだ瞳で見上げた。 またもや俺は自分に向けられているわけでもないのに、あまりの可愛さにキュンとしてしまう。 俺、こういう守ってあげたくなるような子が好きなのかも知れない… 自分のタイプを認識できたところで、ケーイチがどう返すのか気になってケーイチを見るといつもの優しそうな笑顔を浮かべていた。 「ごめんね?ずっと前から約束してたことだから」 決して威圧的な言い方ではないのに、発した言葉には有無を言わさない圧力が感じられた。 ちなみにずっと前という名の5分前の話である。 「…わかった…じゃあ…また来るね」 ミキちゃんは聡い子なのか、ケーイチの言葉に反抗することなく素直に頷く。 「…」 そのままチラリと俺の方へ視線が動きドキッとしたが、ミキちゃんはすぐに視線を外すと踵を返して教室を出て行った。 ミキちゃんの甘い香りだけが残る。 前回ミキちゃんに睨まれてビビったが、今日は睨まれなくてよかった。どうしてあの時俺のこと睨んだろう。 未だに謎である。 「はー、助かったぜ!ケーイチ!」 佳威がようやくケーイチの背から体をずらした。そんな佳威に呆れた顔をしながらケーイチが尋ねる。 「佳威…あの子Ωだよね?だめなの?」 「あー、ダメダメ!全然タイプじゃねえ」 「ああ、そう。…ていうか睦人はいちいち顔赤くし過ぎじゃない?」 「え!?うそ!?俺赤くなってた!?」

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