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ばっと顔を手で抑える。そんな顔に出していた気は無かったが。 慌てる俺を見てケーイチは少し悪戯っぽい顔をして笑った。 「嘘だよ。…でもそっか~、睦人はああいう子が好きなんだ」 「童貞らしい趣味だな」 「どっ…!!!はあ!?」 佳威の鋭いツッコミに今度こそ本当に顔が真っ赤になったのが分かった。 「なんで、俺が!その、ど、ドウテイなことになるんだよ!!」 「違うのか?」 「……………」 否定できず、プイッと横を向く。 「…あーあ、佳威のせいで睦人が怒っちゃった」 「あ?嘘だろ。んなことで怒んないもんなー?」 肩を掴まれて顔を覗き込んでくる佳威の手を振り払って俺はカバンを掴んだ。 「知らねー!俺先にラーメン屋行っとくから!!」 「はあ?なんでだよ…おい!マジか」 後ろの方で佳威の声が聞こえたが、俺は気にせず走り出した。 くそー!佳威め!自分がモテるからって俺の童貞を…ネタに…くっ、 我ながら子供っぽい理由ではあるが、そっぽを向いた手前引けなくなってしまった。 靴箱まで降りきたところで、やっぱりここで待っとこうかな…余計ネタにされそうだし、なんて考えていたら後ろから声を掛けられた。 「ねえ」 驚いて後ろを振り向くと、そこには先ほど会ったばかりのミキちゃんが立っていた。 睫毛が長く大きな瞳が俺を真っ直ぐに捉える。何かに似ていると思っていたがアレだ、子鹿だ。 「ミキ…ちゃん?」 「ちょっと話があるんだけど」 「…佳威は、居ないけど…」 「君に用があるの」 先ほどまでの可愛らしさとは打って変わって、無表情で俺を見るミキちゃん。 「でも、俺これから飯に…」 「いいから来て!」 ミキちゃんの小さな手が、俺の腕を掴んでそのまま走り出した。さらさらと靡く髪からこれまた甘めのシャンプーの香りが引っ張られる俺を包み込む。 な、なんだ!?なんなんだこの展開! ミキちゃん結構強引だな…つーか女の子の匂い~~!! 無理矢理引っ張られてはいるものの、美少女と手を繋いでいる――正確には掴まれているのだが――という状況にほんの少しテンションが上がっていた。 例え相手が自分の友達に夢中になってたとしても!男とは単純な生き物だ…としみじみ思った。 なんだかんだと考えているうちに、連れて行かれた先は人気の無いゴミ置場だった。 校内には掃除夫さんが勤務しているのだが、15時ぐらいにはみんな帰ってしまうらしいので、この時間帯にはほとんど人が居ない。 こんな人気の無いところに連れてきて、俺に何を言うつもりなんだろうか。 すでにミキちゃんの手は俺から離れていた。それを少し残念に思いながら、ミキちゃんに話しかける。 「あの…話って?」 「浅香くんって、最近転校してきたんだよねっ?」 「?…うん、そうだけど」 「浅香くんって…佳威くんのなんなの?」 「…なにって…友達だよ」 そういえばそんなことを矢田にも聞かれたな。 訳のわからない質問に困惑しながら答えると、ミキちゃんがキッと俺にキツイ視線を向けた。 「嘘言わないで!狙ってるんでしょ?佳威くんのこと!それとも…もしかしてもう付き合ってるの!?」 「付き…!?え!?俺が!?なんで!?」 慌てて否定の意味を込めて、聞き返すとミキちゃんがふっくらとした形のいい唇を噛んだ。 「なんでって…、君もΩなんでしょ?春行くんが言ってたよ」 まさかの発言に俺は言葉が出ず立ち尽くすしかなかった。

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