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06

ひとり離れた場所でその台詞を聞いた俺は心の中で盛大に叫んだ。突然のR18な告白にドキドキする。 ミキちゃんは存在感のある柔らかそうな胸を寄せて渥を物欲しげに見上げていた。 あ、もしかして、ヒートか…? もうすぐヒートがくると言っていた。少し早まったのか、αである渥に引きずられて起きてしまったのかは分からなかったが、目の前の美少女はどうやらヒートが始まったみたいだった。 同じΩである俺には相変わらずミキちゃんのつける甘い香りが少し濃く匂うぐらいだったが、多分αである渥には実に魅力的で誘惑されるフェロモンを出しているに違いない。 「…αだったら誰でもいいんだろう?ずいぶん淫乱なんだな」 その証拠に言葉とは裏腹に、ミキちゃんに触れる動作はゆるやかで優しいものだった。 「やぁ、…そんなことない…くろさわくんがいいの…、くろさわくんじゃなきゃだめなの、ぉ…」 切なそうに身をよじらせて渥にすり寄せるミキちゃん。 もはや俺の姿は目に見えていないようだった。ここが学校だということも忘れているのか、しきりに渥の体を触っている。 「おねが…、キス….して、ぇ」 発情――まさにその言葉がピッタリな表情だった。 渥はミキちゃんの頭をグイッと引き寄せる。 お願いされた通り本当にキスをするのかと思ったら、そうではなく何かを耳元で呟いていた。 直後、ミキちゃんの熱っぽい瞳が立ち尽くす俺の方を見上げる。 「!」 目が合った瞬間、多分俺の中にある男の部分をガツンと何か硬いもので叩かれたような衝撃が襲った。 「あ…」 「はる、ゆき、くん…?」 しかしミキちゃんは俺を見たわけではなく、俺の後ろを見ていた。 慌てて振り向くと、いつの間に現れたのか俺の背後に矢田の姿。 相変わらずの身長の高さとガタイの良さに思わず飛びのく。 「矢田…!いつのまに」 「ミキ……フェロモンがだだ漏れだよ。悪い子だ」 矢田も矢田でミキちゃんしか見えていないのか、俺には特に反応せず歩いて行く。 「遅いぞ」 渥が一言嫌味を言うが矢田は気にした様子も無く、ヒョイっとミキちゃんを抱き上げた。 「もう少し遅かったら俺が可愛がってやろうと思ってたのに」 「そんなことはさせないさ。君の相手なんかしたらミキが使い物にならなくなるだろう」 「そんなに褒められてもな」 「…君は相変わらずだな」 「お前には言われたくない。Ωに本気になったところで苦労するのは…おっと」 余計なことを言った、というふうにわざとらしく口を押さえた渥に対して矢田が笑う。 「優しいんだな、黒澤。……さあ、行こう、ミキ」 「はるゆきく、ん…」 ミキちゃんが矢田を見上げて、コクリと静かに頷いた。 そんなミキちゃんを見ながら、本当にαなら誰でもいいのかもしれない、と少し意地悪なことを考えていた。 俺はまだヒートを経験したことはないが、一度ヒートを迎えると性行為のことしか考えられなくなるという。 そうなれば誰でもいいから、αが傍にいるなら尚更、相手を見つけてその行為にだけ浸っていたいという気持ちになるのかもしれない。 ミキちゃんをお姫様抱っこして生徒寮の方に向かって歩いて行く矢田の姿を見て、これから一週間あの部屋でずっとやるのか…と想像して、なんとも言えない気持ちになった。

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