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待て、俺。 とりあえず一度落ち着こう。 えーと… なんで頷いちゃった? あれじゃまるで、俺がまた会えるのを楽しみにしてるみたいだったよな。そりゃ、渥と会えるのは嬉しい。散々酷いこと言われた気がするけど、普通に会話してくれるならいつでも会いたい。 それにあの場に渥が現れてくれて正直助かった。興奮状態のミキちゃんには取り合って貰えなかったし、物騒なこと言いだしていたし? だけどさ、 俺の記憶が正しければ、あの後あろうことかあの、渥に、キ、キスを………… 「ああああああぁ…!!」 ガバッと両手で頭を抱えて机に肘をついた。 「なに、テンプレみたいなことしてんだよ」 横で佳威がズルズルとラーメンを啜る。 「えっ、見てたのか…?」 「ちょうど見えたんだよね、ごめんね?」 「…さらには友達に見られてたなんて……ううう……」 「いいじゃねえか、首にキスされたくらい犬に噛まれたと思っとけば。そんなことより、早くラーメン食わねえと伸びるぞ」 そんなことより!? 俺のキスよりラーメンの心配かよ! だけどタイミング良く唇にキスされたのは見られていなかったみたいで良かった。ホッと一安心だ。せっかく作ってくれたラーメンが伸びるのは確かに嫌なので箸を掴む。 俺たちはあの後、どうする?今日はやめとく?というケーイチに反して、放心状態だった俺を佳威が引きずって当初の目的であった丸屋というラーメン屋にやってきていた。 丸屋のラーメンは醤油ベースの麺が汁としっかり絡んでいて凄く美味しい。 店主は40代ぐらいの割と若めの男性で、店内も広く、バイトだろうか。俺たちぐらいの年齢の子たちが注文を取ってくれた。 「あ。でも今日のことは絶対他に言いふらすなよ、黒澤信者にイジメ倒されるから」 「言いふらす訳ないだろ!」 「あれー?佳威ぜったい怒ってると思ったのに」 ケーイチが意外そうに、俺の前に座る佳威を見る。佳威はラーメンだけでは足りないのか炒飯と餃子も頼んでいて、今は炒飯を食べていた。 「ほほるはへないはろ」 「も~、だから口にモノ入れながら喋らないでよ」 「口にモノが入ってる時に話しかけるお前が悪い」 炒飯をゴクン、と飲み込んだ佳威はそう言うと水に手を伸ばした。 確かに、矢田の時はあんなに怒っていたのに、今回は全然怒っていない、ように見える。 「ちなみに俺は怒ってるからね、睦人に」 正面に座っていたケーイチが、ニッコリ笑った。

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