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この笑顔はアレだ。ただ表情筋を動かしているだけの怖いやつだ!説教だ! 「え……えー?俺…?」 とりあえず急いで残りわずかだったラーメンを啜った。 「睦人言ったよね?黒澤くんとは接触しないようにするって。なのにどうして二人でいたの?」 「…っそれ!それ誤解!そもそも事の発端はミキちゃんだよ」 「島山さん?」 「そう!あの子に話があるって引っ張られて行ってみたら……まあ色々あって俺に怒っててさ、ちょっとヤバい事言い出してきたなーってところで渥が向こうから現れたんだよ」 Ωだのどーのこーののくだりは佳威もいるしあまり言いたくないので省いた。何となく分かったのかケーイチも追求してこなかった。 「ヤバい事ってなんだよ?」 佳威が餃子に伸ばしかけていた手を止めてこちらを見る。 「なんだったかな……あ、ミキちゃんの周りにはミキちゃんを大好きなお友達がいるとかなんとか……」 よくある脅しだと思う。 言うこと聞かないならその友達がお前に何をするか分からないよってことだろ? そんなことを言い出す子には思えなかったが、恋愛感情が絡むとスイッチが入ってしまうのかもしれない。 「なんだそれ。ウケるな」 佳威が阿呆らしいとでも言わんばかりの顔で吐き捨てる。全然ウケてないのがバレバレだ。 佳威の家のことを考えると確かに…小さい話だろう。ただ、俺としてはそうもいかない。 「全然ウケないよ。勘弁して欲しい」 「大丈夫大丈夫。俺からも言っとくから」 言いながらパクリと餃子を口に入れる。 言うって何を言うつもりなんだ。 「佳威。言うのはいいけど一応相手は女の子だからね。ほどほどにね」 ケーイチが念押しをするが、俺にはイマイチ想像ができない。相当怖いことでも言う気なんだろうか… 「それにしても、あの黒澤くんがわざわざそんな面倒くさいことに首を突っ込んで来るなんてね…幼馴染って話は本当なんだ。あ、別に疑ってたわけじゃないよ?」 「…それ完全に疑ってたやつだろ……てか今さり気なく面倒くさいって言った?」 「黒澤くんってそんなことするキャラだっけ?」 「あれ、無視?」 「俺が知る限り誰かに興味を示してるとこは見たことねえな…つっても、そもそもあいつのことそんなに知らねえけど」 「でも中学一緒だったんでしょ」 「あ、そっか。佳威もαだから桐根学園に居たんだ」 ケーイチがあまりに大胆に俺の話を無視するので仕方なく話題に加わる。 αは自分の性であるアルファについて桐根学園で専門に学ぶ。だから佳威も渥も同じ中学を出ていることになるはずだ。 中学時代の渥か…凄い気になる。 「中学時代の渥って…どんな感じだったんだ?」

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