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早く話を変えたくてそう切り出すと、あからさまに嫌な顔をされた。
「は?さっき亮太さんの話聞いてなかったのかよ。二度も説明させるな。俺は亮太さんに連れて来られただけだ。お前に用は無い」
「え………そうなの…?」
「睦人がもう少しで帰ってくると思うから待ってて、と香織さんに言われたから待ってただけで、本当にお前を待ってたわけじゃない」
「…………」
なに、この恥ずかしい感じ。
俺は手に持っていたコップを握り締めて、その後そっとテーブルに戻した。
「…親が色々と…その、強引に悪かったな…」
「亮太さん達は悪くない。俺もあの人達には会いたかったし、飯、美味かった」
「そ、そか…ならいいけど。…その態度俺にも向ける気ないの…?」
「なに?」
「あっ、いや!なんでもない!」
両親への態度が俺と180度正反対なことを目の当たりにして、ちょっと寂しくなったのかも知れない。
渥は昔の渥とは違う、と自分に言い聞かせてきた部分もあったから、昔のように両親に懐いている渥を見てしまうとどうしても仲の良かった頃が恋しくなってしまう。
だけど、今そんなことを言ったって、
きっと――
「俺は大切だと思う人しか大切にしない」
ほらな。
帰ってくる言葉はいつも辛辣だ。
でもさすがに、これは胸が痛いんだけど。
「……あ、渥はさ、俺がなに言われても傷付かないとでも思ってんだろ…?」
声が震える。渥は何も言わずに俺を見下ろすだけだ。
「もちろん俺だって大切に思われてるなんてお前の態度見てたら思わないよ?でも…でもさ、だったらどうして…」
俺にキスなんてしたんだよ。
つい、今日あったことが頭をよぎり、そんな女々しい事を口走りそうになった。
なんの話の脈絡もないし、言ったところで返事が返ってくる気もしない。直前でなんとか堪えて下唇を噛んで下を向いた。
αの考えてることなんていつだってよく分からないんだ。
でもそんなの関係なくたって、今の渥のことはよく分からない。あんなに仲良くて誰よりも分かり合えていると思ってたのに。
ベッドが揺れる音がして、すぐ側に慣れない体温と、芳しい香りが鼻を掠めた。
「泣くな」
短い言葉と共に、顎を掴まれて強い力で上を向かされる。
すぐ側に渥の端正な顔があって、ギクリとした。すらりと長く少し骨張った指が俺の目元を撫でる。
俺はそこでやっと自分が泣いていることに気付いた。
あれだけ女々しいことを言いたくないと唇を噛み締めたのに、結局一番女々しいことをしてしまった気がする。
泣くつもりなんて無かったのに。
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