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02
そういえば、佳威はケーイチ以外とはつるまないと言っていたから、興味のない人たちと仲良くするのが面倒なのかもしれない。
「あ~、そういえば佳威は去年散々だったもんねえ」
なんて考えていたが、ケーイチの言葉を聞くとそれだけじゃ無いみたいだ。
「去年、なんかあったの?」
「それがね。だいたいさ、班は一年と二年男女合わせて八人ぐらいのグループになるんだけどね、佳威はαでしょ?」
「あ、もしかして激モテしちゃったとか?」
「激モテは当たり前だよ。なんでこんなのがモテるのか、みんな外見に判断されすぎだよね」
「おいケーイチ」
佳威がギロリと睨む。なまじ顔がいいだけに凄い形相になっててとても怖い。
「ごめんごめん、話が逸れちゃった。えっと、なんだっけ。…あ、そうそう。まあそういうわけでグループにいた女の子達が佳威にいいとこ見せようと我先にと色々やって喧嘩始めちゃったんだよ」
「えー、そんな漫画みたいなこと現実で起こるやつ居るとか…羨ましすぎるんだけど」
つい本音が漏れる。
だって、自分を取り合って女の子が喧嘩するなんて、多分俺は一生ない。断言できる。
「普通はそう思うよねー。でも、あれはやばかった。女子って怖いなって俺でも思ったもん。しかもそれを目の前で繰り広げられて、佳威の機嫌はどんどん悪くなるし、それを見て蚊帳の外だった他の男子達が怯え出すしで、…なんかもうあれはカオスだったよね…」
「飯だけが楽しみだったのに、結局あの時食った飯の味全然覚えてねぇよ…」
二人が遠い目をしてそんなことを言うもんだから、俺もちょっと想像して引いてしまった。
「た、大変だったんだな…。てか、二人とも同じグループだった、ってこと?」
「うん、そうだよ。あっ、そういえば今年はどうなったんだろ?」
そう言いながらケーイチが先程配られた用紙に目を落とした。
俺も同じようにケーイチの持つ用紙を覗き込む。
…反対からだとよく分かんないな。
「あっ」
仕方なく自分で見るかと自分の用紙に手を伸ばそうとしたら、ケーイチから嬉しそうな声が上がって反射的に振り向く。
「睦人!俺たち一緒のグループだよ!」
「嘘!マジ!?やったー!」
「俺は?」
「えーと、佳威は……居ないね。佳威は12番のグループみたい。俺らは23番だよ、睦人」
「はああああああ、ありえねえ……」
佳威が分かりやすく落ち込んで頭を抱えた。
「佳威…!元気出せよ!グループ違っても同じ空間には居るわけだし、また去年みたいになことが起こったら俺らのとこ来ればいいじゃんか」
余程ショックだったようで、頭を抱えたまま動かなくなった佳威に慌ててフォローを入れると、ようやく顔を上げた。
「睦人いいこと言うな…。はあ……、まあそうだな。そうだよな」
自分に言い聞かせるように呟く佳威がちょっと不憫に思えてきた。
モテ過ぎるのも考えものだな…。羨ましいけど。
「……ケーイチ?」
ケーイチが用紙を見つめながら少し眉を潜めていた。
不思議に思って名前を呼ぶと、すぐにケーイチはいつもの笑顔になって、なんでもないよ、と笑った。
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