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03
午前の授業を終え、昼食を摂り終えた俺たちは朝のホームルームで言われた通り体育館に向かっていた。
体育館に近付くにつれて、どんどん人の数が増えてくる。
同学年の生徒の中には見たことのある生徒達も居るが、転校してきた俺にとってはだいたいが見たことのない生徒ばかりだった。
それに加えて一年生も集まっているわけだからなかなかの数だ。
体育館に足を踏み入れると一年生だろう小柄な女の子達が佳威に気付いてキャアキャアと色めき立った。ちなみに佳威はいつものように無反応で、俺の横を歩いている。
「うわ~…いっぱい居るな」
がやがやと賑やかな体育館の中には、もう既にかなりの人数が集まってきていた。
全体を見渡すとどうやら左側が一年生、右側に二年が集まっているみたいだ。
右側に向かって歩きながら一年生の方へ目を向けると、ところどころ周りから群を抜いて綺麗な子や堂々とした振る舞いの高身長なイケメンたちが目に入る。
多分彼らはαだ。当たり前だが、一年生にもαは存在しているらしい。
αの周りには基本的に人が集まってくるから、纏う雰囲気など見なくてもだいたい分かってしまう。
チラリと隣を見ると、他と触れ合うのが相当嫌なのか目の据わってしまった佳威がいた。…多分、佳威が特殊なだけなんだよな。
佳威は気に入った人間しか傍に置かない。
その中に昔からの幼馴染であるケーイチがいるのはもちろんのことだが、最近出会ったばかりの自分がいることがちょっと嬉しかったりもする。
「佳威…目、やばいって」
さりげなくそう伝えると、佳威がこちらを向いた。俺の横にいたケーイチまで「うわ」と声を上げる。
「なにその顔。怖すぎだからやめてくれる?一緒にいる俺たちまで変な目で見られるだろ」
「ケーイチてめぇ…」
「あ、あー!そういえばさー!きの…」
「あー!佳威クンじゃん!おーい、佳威クーン!」
またもや喧嘩をし出しそうな二人の意識をこちらに向けるため、昨日のテレビの話でもしようかと口を挟もうとしたら、後ろから聞いたことのない声が飛んできた。
突然飛び込んできた声に俺たちは揃って振り返る。佳威だけは少し面倒くさそうにゆっくり振り返った。
「ヤッホ~」
振り返った先には、制服を着崩した派手な男子生徒が大きく手を振っていた。
ネクタイもせず、第二ボタンまで開けられたシャツの下には色鮮やでサイケデリックな柄のTシャツが覗いている。
ワックスでオシャレに盛った髪の毛も金髪に近い明るい色合いで、よく似合っていた。
瞳は猫のように弧を描き人懐っこそうで、笑う口端からは犬歯がのぞいている。
両手をポケットに突っ込んだままモデルのようなスタイルの良さで、俺たちのすぐ傍まで来たそいつは、細めていた目を大きくぱちっと開けて佳威を指差すと、
「やっべ!なにその顔!超こえーんだけど!佳威クンやめなよ、それ~」
と、爆笑した。
「!?」
この佳威の不機嫌面にそんなこと言えるのは、ケーイチぐらいなものだと思っていたが…
突然現れたこの超絶派手なイケメンオシャレボーイ、一体何者だ。
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